相続税対策の王道と言われているのが「不動産」の活用だ。しかし、その道が塞がれるかもしれない。今年4月、相続の王道であった不動産活用について最高裁がNGの判決を下したのだ。はたして「マンション節税」はもう通用しないのか──。【前後編の後編。前編から読む】
よかれと思って講じた対策が裏目に出て、追徴課税となることは避けたい。
そのためには、どこからがNGとなるのかの境目を知ることが重要となる。『ホントは怖い相続の話』などの著書がある税理士法人レディング代表税理士の木下勇人氏が語る。
「その明確な境目はなく、極めて曖昧な領域です。ただし前述(*前編記事参照)の通り、最高裁判決は『相続税ゼロ』と『相続税対策が主たる目的』であったことを問題視しました。この2項目に当てはまらないかを注意しましょう」
それを考えていく上でのカギとなるひとつが「不動産の購入金額」だ。
「いくらからダメかという線引きは難しいですが、一般に相続開始に近いタイミングで高額の不動産を購入する場合、『相続税の節税対策ではないか』と判断される恐れがあります」(木下氏)
Aさんのように、高齢者が借金をして不動産を購入するケースにも当局は目を光らせているという。
「相続の直前や数年前に銀行からお金を借りて不動産を買った人は、相続税の節税目的が疑われます。高齢であるほど不自然だと見られやすいでしょう。Aさんは90歳を超えてから10億円を超える借金をしてマンションを購入しました。そうした高齢者名義での多額の借り入れによる不動産購入が国税庁の目を引きやすくなっているはずです」(同前)
また、Aさんのケースでは相続発生のわずか9か月後にマンションを売却していたことからも、あからさまな相続税対策だとみなされた。相続から売却するまでの期間があまりにも短すぎるのは避けたほうがよいだろう。