相続税にまつわるトラブルとして多いのが「遺産分割」だ。税理士法人チェスターの税理士・福留正明氏が指摘する。
「誰がどれだけ相続するかは法定相続分という目安がありますが、現実にはトラブルが多い。特に子供のどちらかが親と同居し、片方は住んでいないケースでは、同居する子供は『親の面倒をみたから財産を多くもらえる』と思い込み、片方は『同居は親に家賃を出してもらったも同然で、財産は自分たちが多くもらう』と、双方の思惑が真っ向からぶつかります。
そうした事態を防ぐためには、同居している子供が親との具体的な金銭のやり取りなどを記録しているとよい。親を支援したのか、どのくらいの負担があったのかがはっきりすれば、相手が疑いを抱く余地は少なくなります」
山本宏税理士事務所の税理士・山本宏氏は「節税ばかりに主眼を置くとミスが出る」と語る。
「相続税は現金が最も高く、時価に比べて評価額の低い不動産は安くなります。そのため、まとまった土地を所有していると、銀行や不動産会社が『アパートを建てれば相続税が安くなり家賃収入もある』と甘い誘いをしてきます。そこでアパートを建てると本人が亡くなった時に遺産を分割しにくく、子供たちがもめることになる。多少相続税がかかっても土地を現金化しておくほうが相続は円滑になりやすい。子供を思いやった節税対策が裏目に出ることもある」
また相続税対策としては「生前贈与」も有効だが、落とし穴がある。岡野相続税理士法人の税理士・岡野雄志氏が語る。
「相続税対策で頭がいっぱいで子供や孫への生前贈与を頑張りすぎ、肝心の自分の生活が立ち行かなくなる事例が多々あります。こうした“贈与貧乏”に陥ると介護が必要になった際、子供たちが面倒をみてくれなくなることもある。『カネの切れ目が縁の切れ目』で、身を滅ぼす生前贈与は避けてほしい」