「えっ、水って買うものなの?」──ペットボトル入りの「水」が発売されたときの衝撃が今でも記憶にあるという人はおそらくアラフォー以上だろう。その前の衝撃はお茶だった。ウーロン茶が缶入りの飲料として自動販売機等で売られるようになったのが1981年という。
このとき誰もが「え、お茶って買う人いる?」と思った。それまでお茶といえば、急須で入れて飲むものだった。「お茶を買うなんてなんか贅沢」という感じがあった。その抵抗感が薄れたころ、1983年に登場したのが「六甲のおいしい水」だった。
その後、「ボルヴィック」が1986年に、「エビアン」が1987年に相次いで登場したときには、ミネラルウォーターを買って飲むのがちょっとおしゃれになっていたのを懐かしく思い出す人も多いだろう。1990年代になると水を買って飲むことが当たり前になっていく。
そんななか、2000年代になって本格的に普及しはじめたのがウォーターサーバー、宅配水だ。日本宅配水&サーバー協会によると、国内のウォーターサーバー市場は2011年に910億円だったものが、2021年には1816億円と10年で2倍に成長している。
「フレシャス」ブランドで宅配水事業を手掛ける富士山の銘水(本社:山梨県)は、2022年4月期の売上高は前期比39.8%増の270億円、純利益は前期比2.25倍の45億円と大幅増となった。こうした活況を見た異業種からの参入も相次ぎ、家電量販店のビックカメラは山梨県富士吉田市に工場を建設し、ウォーターサーバー事業に乗り出すとしている。
すでに成熟したと思われたミネラルウォーター市場だが、近年はウォーターサーバーが市場を再拡大させているように見える。では、なぜウォーターサーバーがこれほどまでに受け入れられているのか。
ひとつのきっかけとして指摘されるのが、2011年の東日本大震災である。安全な飲料水を求めた結果、宅配水が選ばれたというのである。ミネラルウォーターやウォーターサーバーに詳しいアクアソムリエ協会公認講師の鶴田雅人さんは、消費者側の動向としてその他にも3つあるという。