インフレ抑制のための利上げで景気が減速
主要国の貿易依存度を比較してみると、韓国は58%(2020年、UNCTADより、以下同)ある。主要なEU諸国よりは低いが、中国の30%、日本の25%、米国の18%などと比べると随分と高い。国際環境の変化に影響を受けやすい経済構造であることが、仇となっている。
問題はそれだけではない。韓国では消費者物価指数(CPI)が高水準で推移しており、利上げを余儀なくされている。株式市場にとってこれは厳しい。
2021年9月の段階では、2.4%に留まっていた上昇率がその後急上昇、今年7月には6.3%に達している。8月はやや低下したものの、それでも5.7%と高止まりしている。
物価上昇の背景には2020年上期に発生した新型コロナのパンデミック対策として、行った大規模な金融緩和政策の弊害がある。供給側の回復が進んでいない一方で、需要ばかりが刺激されたことで、インフレが発生した。
このインフレを抑えるために、韓国銀行(中央銀行)は2021年8月に利上げを開始。2021年は2回、2022年に入ってからは8月までに5回の引き上げを実施した。この間、約1年の間に2.00%の金利を引き上げており、現在の基準金利は2.50%まで上昇している。
米国では2023年の利下げ期待が萎んでしまったばかりだ。このまま、ドル高ウォン安が続けば、インフレ圧力は収まらない。そうなれば韓国も利上げ継続が予想されるが、それが景気を減速させ、株安となって跳ね返ってきてしまう。
タイミングの悪いことに、金融緩和の期間が長かったこと、新型コロナ禍対策としての金融緩和が強すぎたことなどから、不動産や暗号資産への投機が膨らんでしまい、足元ではそれらのバブルが崩壊するリスクが市場関係者たちの間で意識され始めている。
株価の話に戻すが、韓国総合指数は大きく下げてはいるが、2018年後半から2019年にかけて形成された下値抵抗線の2000ポイント辺り、或いは2020年3月19日に記録した新型コロナ禍による安値1439.43ポイントまでには、まだ余裕がある。現段階で韓国発のグローバル金融危機の発生まで心配する必要はないだろう。
とはいえ、株価はリスクに敏感だ。今後、韓国の金融危機発生のリスク、それが連鎖して起こるかもしれない世界金融危機の発生リスクを計るための一つの物差しとして、いわゆる「炭鉱のカナリア」として、韓国総合株価指数は機能しそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。