戦後の占領からの名残である「横田空域」を巡っては、石原慎太郎・元東京都知事(故人)も返還を強く求めたことがあったが、いまなお続いているのが実態だ。
それゆえ、日本政府が観光立国を目指し、羽田空港に発着する国際線の増便を進めた際にも、新飛行ルートは基本的に横田空域を外したルートを選ぶほかなかった。つまり、横田空域の問題は、日本の主権が米国に侵害されていることにとどまらず、羽田の離着陸数の制限にもつながっている。
アジアにおける拠点となる「ハブ空港」として、韓国の仁川国際空港やシンガポールのチャンギ国際空港などと国際競争にさらされている羽田空港の飛行ルートに制限がかけられていることは、経済的にも大きな損失につながっているといえるだろう。
米国の経済制裁の「最終兵器」
世界一の経済大国であり、基軸通貨である米ドルを握る米国の覇権ぶりは、ロシアに対する経済制裁でもいかんなく発揮されている。
ウクライナに侵攻したロシアに対して、欧米諸国は【1】国際決済システム「SWIFT(国際銀行間通信協会)」からの排除、【2】ロシア中央銀行が国外に持つ外貨準備高の凍結という2つの経済制裁を科した。ところが、これはあまり広く知られていないが、もうひとつ大きな経済制裁があった。米国の「OFAC規制」である。
「OFAC規制」とは、米財務省のなかに置かれた「外国資産管理室(OFAC)」によって管理下にある銀行にはすべて課せられる規制だ。簡単にいえば、米国にとって好ましくない相手(国家や企業、個人も含む)には米ドルによる決済を許さず、それを取り扱った金融機関には国内外を問わず巨額の罰金を科す――という非常に厳しい規制だ。
過去には、欧州最大の仏BNPパリバが2004~2012年にかけて米国の制裁対象であるスーダン、キューバ、イランの顧客のために88億ドルの送金業務を行なったことが規制違反とされ、違反金額を上回る89億ドルもの制裁金を科された。
実は、日本の三菱東京UFJ銀行も、イラン関連のドル建て決済で送金規制に違反したとして、総額約570億円もの“罰金”を科されたことがある。