今さら恥ずかしくて言い出せない
金銭面や年齢・健康面を理由になる場合は、まだわかりやすいが、そうではないケースもある。
Aさん(41才女性)は、29才の時に結婚し、夫婦とも子供については「自然の流れに任せる」スタンスで、結果的にこれまで授かることなく過ごしてきた。しかし40才の誕生日を迎えたAさんは、ふと子供を持つという考えが頭をよぎった。
2歳年下の夫との仲は良好で、夕食時には晩酌しながら3時間も4時間もおしゃべりするほど。年に数回は2人で旅行に出かける仲良しカップルだが、夜の生活からは長らく遠のいている。
「夫とは本当に仲良しで、ケンカした記憶もありません。ただ、ずっと一緒にいるうちに、友達というか、姉弟というか、家族というか……そういう関係になってしまい、今さら恥ずかしくて言い出せません。そうこうしているうちに年齢も上がっていってます」(Aさん)
Tさん(36才女性)も本心では子供が欲しいが、表面上は「子供は欲しくない」と言っている。
「私は銀行で働いていて、夫は会社の同僚。若い頃は仕事が楽しくて、お互いに『夫婦2人の生活を楽しもう』と言っていましたが、友人から子供の話を聞かされるうちに、だんだん子供が欲しくなってきました。ただ、それとなく夫の意向を探ると、『欲しくないって言ってたじゃん』と言うばかり。ずるずると時間が経っています」(Tさん)
夫婦どちらも望んでいるのにボタンの掛け違い
Kさん(42才女性)のケースは、パートナーに対する愛情が深かっただけに、ちょっと複雑だ。Kさんの友人が語る。
「Kさんは30才直前に結婚しましたが、結婚当初から周囲には“子供は持たない”と宣言してきました。夫は学生時代からの憧れの人で、付き合うことになった時、Kさんは感激で大号泣したほど。夫の方が“子供は持たない”主義のようで、Kさんは本音では子供が欲しいと思いながらも、夫の方針を尊重している様子でした。
しかし結婚から10年以上経ったある日、気の置けない仲の友人たちとお酒を飲んでいる時、子供の有無の話になりました。Kさんの夫が『自分はいてもいいと思うんだけど、妻が子供は持たないでいいって言うから』と言うので、『あれ? そもそもKさん側の意向だったの?』という話になり、よくよく話を聞くと、夫が結婚当時“まだいいかな”ぐらいの意味で言っていた言葉を、Kさんが拡大解釈していたことが判明。延々ボタンの掛け違いが続き、互いに“相手が子供を欲しがっていない”と思っていたようです」(Kさんの友人)
夫婦間のコミュニケーション次第では、また違った選択もあったかもしれない。その合意は、本当の合意なのか。夫婦にとって大きな、そしてデリケートな問題だけに、お互いの感情を見誤らないようにしたい。