政府が「受け取らない」と言っているのだから、本来なら出しようがないはずだ。
それでも渡す“抜け道”があるようなのだ。2年前に営まれた中曽根康弘・元首相の内閣・自民党合同葬では、今回同様、「香典辞退」と案内された。
ところが、群馬県ホームページの知事交際費には、〈香典 10月17日 中曽根元首相内閣・自由民主党合同葬儀 10000〉とある。
山本一太・群馬県知事が香典1万円を支出したとの記載である。知事交際費は県民の税金だ。
群馬県秘書課の担当者は、「中曽根元総理の合同葬で山本知事が香典として1万円を置いてきたことは事実です。しかし、知事は外遊中で、誰に渡したかは確認できなかった」としか説明しない。
通常、香典は葬儀の主催者に渡される。中曽根合同葬の山本知事からの1万円は内閣か自民党が受け取り人になるが、内閣府の当時の合同葬担当者は、こう言う。
「内閣府が受け取ってはいないと考えられる。自民党さんが預かってご遺族にお渡ししたのかもしれない」
自民党に同じ質問をすると、「すぐに調べられるような記録が残っていないので、即答はできない。香典は遺族に渡すものだから、たぶんそうなっているはず」(総務局)とするのみだった。
“血税”が原資の香典がこれでは困るが、要するに「香典は辞退」と案内しても、自治体代表が遺族などに渡しているとみられる前例があるのだ。
県民葬で6300万円
安倍元首相への香典は既に税金から多く支払われている。
まず国会議員の分だ。国会では、7月26日の衆院議院運営委員会の理事会で、安倍氏に「国会議員1人2000円」の香典を8月分の議員歳費(原資は税金)から徴収すると決定。衆参全議員の716人(欠員2)では総額約142万円になる。
衆院事務局の広報担当者がこう説明する。
「衆議院先例集には、『議員が逝去した時は、議員一同から香典をおくる』と書かれている。これは第5回国会で決まった。通常は遺族、喪主にお渡しすることになる。金額はその都度議院運営委員会で決める。
今回は8月の歳費から1人2000円ずつ徴収したが、まだお渡ししていない。国葬当日はお渡しするタイミングがないと思うが、通常は本会議場で行なわれる追悼演説の際に、遺族が来られるからその時にお渡しする。今回もそうなると思われます」