魅力として挙げられるのは、スクエアでシンプルなフォルムの美しさです。車のデザインは「デザイナーの自信の現れ」でもあると思います。自信がないからこそエクスキューズは増えていき、無駄なエッジや膨らみ、さらにはこれ見よがしの空力パーツなどを入れたくなるもの。ところがレンジローバーは、ただ滑らかな面を破綻なくつなぎ合わせただけの潔いフォルム。そこからは一種のエレガンスを感じるのです。これなら高級ホテルのエントランスにも横付けできます。
フォーマルなシーンに似合うだけではないのです。今もって、レンジローバー伝統のオフロード性能は世界トップレベルにあります。朝露に濡れ滑りやすい牧草地やぬかるんだ泥の道を変幻自在に走り回る実力を有しています。今回は残念ながら道なき道を、というルート設定はなく、スペックから想像するだけです。路面と車体のいちばん低い位置の長さ、最低地上高は219mmです。これはトヨタ・ランドクルーザー・プラドやジープ・チェロキーなど悪路に強いSUVと遜色ありません。ちなみに一般的な乗用車、たとえばトヨタ・カローラの最低地上高は130mmほどで、SUVイメージの強いカローラクロスで160mmほど。それを考えると十分なクリアランス(タイヤとボディとのすき間)を確保していることになります。
さらに、水深のある川などを渡るときの基準となる「渡河能力」は90cmという走破性を持っています。90cmの水深に耐えられるということです。最近、突然の豪雨などで、水に浸かり不動となるクルマもありますが、レンジローバーはタフに走れることでしょう。世界一過酷とも言われたキャメルトロフィー(Camel Trophy)を始め、数多くの冒険ラリーで輝かしい実績を残してきたSUVでもあります。
大柄でも取り回しは良好
ただ、それだけでレンジローバーは終わらないのです。極限の悪路走行においてレンジローバーを凌ぐSUVはあります。しかし、レンジローバーは悪路、岩などがゴロゴロとあるようなガレ場でも、適正に制御されるエアサスペンションが路面からの強いショックを巧みに吸収し、ボディをできる限りフラットに保ちながら走り切るのです。多くの悪路で見せる、平穏で高い快適性を伴った走破性は、新型モデルになっても変わらないどころか確実に進化しています。
その磨き込まれた極上の乗り心地は、平坦な路面で存分に味わうことができました。ふんわりと浮き上がるような乗り心地は、9年ぶりにフルモデルチェンジが行われたレンジローバーの走りを、今まで以上に極上なレベルに引き上げていました。まっすぐでは前後の揺れを、コーナリングでは左右の揺れを、フラットに制御してくれます。
そしてドライバーズシートからの良好な視界とスクエアなボディのお陰で、全長5m、2.2m超えの大柄なボディでありながら、車両感覚は驚くほど掴みやすいのです。込み入った市街地やUターンなどの取り回しでも、ストレスはかなり軽減されています。
これにはオールホイールステア、つまり4WS(4輪操舵)が装備されていることに起因しています。低速ではリアタイヤがフロントタイヤとは逆向きに切れることで、最小回転半径を小さくできるのです。ホイールベースは取り回しに影響を与える重要な要素ですが、今回の新型はスタンダードホイールベース(2997mm)と、居住空間がより広くなるロングホイールベース(3197mm)の2タイプ。どちらもかなり長めですが、それでも最小回転半径はスタンダードが5.3m、ロングで6.1mと、この大きなボディとしては、小さくまとめているのです。さらに見切りのいいスクエアなボディのお陰もあり、ストレスなく都内の混雑でも軽快に操れるのです。