年々上昇する夏の気温、たびたび発生する局地的な豪雨──。突然の坊主頭になったことでも話題の気象予報士・蓬莱大介さんが、気象の変化や異常気象について知っておくべき基本情報を教えてくれた。【全3回の第3回。第1回から読む】
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近年、ニュースで「観測史上初」や「異常気象」などのワードを耳にすることが増えたと思います。実際、みなさんも気象が変わってきたことを体感しているのではないでしょうか。たとえば、子供の頃に比べて「雨の降り方が激しくなった」とか、「夏が極端に暑くなった」とか、「秋が短い」とか……。
実はその感覚は正しくて、データ上でも道路冠水レベルの強さである1時間50㎜以上の激しい雨の発生数は、40年前と比べて約1.4倍に増えています(気象庁『全国(アメダス)の1時間降水量50㎜以上の年間発生回数』より。統計期間1976~2021年の最初の10年間と最近10年間を比較)。
夏の気温も年々上昇していて、100年前と比べて30度以上の「真夏日」は約1.2倍、35度以上の「猛暑日」は約3.3倍となっています(気象庁『全国(13地点平均)の真夏日/猛暑日の年間日数』より。統計期間1910~2021年の最初の30年間と最近30年間を比較)。
今年も40度超えの日がありました。これはいままででいうと数十年に1度しか起こらなかったことですが、近年、観測される回数が増えてきました。
ちなみに冬は、北半球では地軸の傾きによって日射量が減るため、必然的に冷たい空気が緯度の高いところでたまり、偏西風が蛇行することで日本の方まで急に冷たい空気が流れ込むことがあります。地球温暖化であっても、自然変動である程度の寒波はきますし、急な強い寒波が来ることもあります。気温が高い期間が長いのに急に寒くなることが、秋を短く感じる理由かもしれません。
こうした気象の変化、異常気象の原因として、CO2(二酸化炭素)排出などによる地球温暖化であることは「疑う余地はない」といわれています。ただそれが、すべての異常気象の原因かというと、議論が分かれるところでもあります。
というのも、地球全体の大きな流れで見ると、たまたまいまが「そういう時期」かもしれないからなんです。過去の災害を調べてみると、疫病や地震、そこに大雨災害が重なるという時代があって、それで都の場所を変えたり、元号を変えたという文献も残っています。
翻って現代もまさにそういう時代ですよね。疫病があり、大きな地震も起きやすく、大雨も極端に多い。となると、昔から地球上で起こっていたことであるかもしれない、という考えも頭の片隅に置いています。予報士を10年以上続けて、「わからないことがあることがわかるようになった」のかもしれません。いずれにせよ、異常気象が頻発している時代であることは確かです。