今年7月に3000万人以上に影響するKDDIの通信障害が発生。同社はその障害に対し、一律200円の通信料割り戻しという補償を発表したが、もしこれを不服として裁判を起こすとしたら、争点はどこになるだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
配送業者です。今回のKDDIの通信障害における損害金一律200円は、顧客をバカにしています。私の場合、仕事にならず、約3万円の損害が出てしまいました。少なくとも、1か月分の使用料金をタダにしてもらわないと納得できません。もし、200円を不服として裁判を起こしたら、勝てそうですか。
【回答】
KDDIは、【1】契約約款に基づく返金と、【2】通信障害のお詫びとしての返金をするといっています。
約款とは、多くの相手と契約をする場合の定型的な契約条件を定め、契約の内容として合意したとみなされるものです。KDDIの約款では、「通信サービスが全く利用できない状態」がわかってから、24時間以上継続したときに限って賠償責任を負うとされ、それ以外の障害には責任がありません。
KDDIの説明では、【1】は音声通信サービスを対象としています。【2】はスマートフォン、携帯電話及び、ホームプラス電話の契約者が対象です。今回の通信障害で全く使えなかったのは、音声通信だけで、それ以外のインターネットに接続するサービスでは、データ通信などが機能しない状態ではなかったために賠償ではなく、お詫びとして通信サービス契約者にも、返金するとのこと。
【1】は約款の規定に従い、基本金の日割額の日数(障害継続時間÷24時間の商)分です。今度の障害は約61時間25分ですから、2日分の基本料金が賠償額になります。その他の契約者に対するお詫びの200円は、音声通信の日割り額等を参考にして決定したようです。