旨味やコクまで“増強”
開発を担当した同社の佐藤愛氏が語る。
「大学病院での研究中、薄味の食事に変わったことで食欲が減退するなど、食事療法でつらい思いをされる患者さんが多いことを知ったのが開発のきっかけです。そこで古くから知られていた微弱な電流を使って味の感じ方を変える『電気味覚』という技術を、現代のニーズに掛け合わせました」
塩味が強まるのはどんなメカニズムなのか。
「塩味は食べ物に含まれるナトリウムイオンが舌に触れた時に感じるものです。エレキソルトは、食品中のナトリウムイオンを微弱な電流を使って一度舌から遠ざけ、電流を反転することでギュッと一つにまとめ、それを一気に舌に触れるようにすることで、塩味を強く感じさせるという仕組みです。スプーンを口に含んで0.5秒ほどで効果を発揮します」(同前)
エレキソルトの電流は食事の塩味を濃くする波形だが、出汁の旨味やコクなども濃くなるのだという。
形状が箸ではなくスプーンになったのは、特にラーメンやみそ汁といった汁物で塩味を求める人が多いからだという。スプーンのほか、椀型の器も開発中で、2023年の発売を目指している。多くの人に歓迎されそうだが、あくまでも「エレキソルトは医療機器ではなく、食を楽しむツール」(同前)だという。
高血圧に悩む人だけでなく、健康を気にするすべての人にとって大きな福音となりそうだ。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号