走りの個性で見つけた「明と暗」
そんなことを考えながら乗り込んでみました。室内はナッパーレザー仕様で高級を目指していることがすぐに分かる仕上がり。そして「これまでのマツダ車の上を行く仕上がり」と開発陣が胸を張ることも理解できるクオリティです。ただ、エクスクルーシブスポーツというモデルということもあり、その第一印象は「高級というより、軽快さやスポーティ」な雰囲気でした。色使いの影響もありますが、もしエレガンスを望むのであれば、「プレミアムモダン」という仕様があります。
どちらの仕様も細部にまで気遣いがなされたクオリティの高さが心地いい居住感を与えてくれます。そこには「いかにも、これ見よがし」といった演出による高級感というものとは違った味があり、個人的な好みで言えば、こちらの方がずっと洗練されたおしゃれ感を感じます。
心地いいインテリアに包まれながら、スッと右足をまっすぐ前方に延ばしていくと、そこにはアクセルペダルがしっかりと待ち構えています。さらに左足をまっすぐ伸ばしていくと、今度は自然にフットレストの上に持っていくことが出来ます。そして両腕をまっすぐ伸ばしていけば、素直にステアリングを握れるのです。これこそ「マツダスタンス」と呼んでもいいほどの優れたドライビングポジションなのです。体をどちらかに少しひねったり、足を少し斜め方向に伸ばしたりしなくてもいい、実に無理のないポジションをごく自然に取ることができます。
これはCX-60だけでなく、小型のマツダ3からCX-8といった大型ボディのクルマまで、すべてのマツダ車に貫かれた利点です。正しいドライビングポジションは安全運転の要であり、ドライビングを楽しむときの基本でもあり、そして疲労感を軽減する条件でもあります。この収まりの良さと良く出来たシートを味わうだけでも「マツダを買って良かった」と思える瞬間かもしれません。
早速、エンジンをスタートさせ、走り出します。ディーゼルという割には静粛性が保たれています。スタートから加速の初期段階は、気をつけて聞いていれば、なるほどディーゼルか、と思い当たる程度のものです。これはモーターによる低速度域などでのアシストも効いているのでしょうが、1.9トンもあるボディを、もたつきもなく軽快に走らせてくれるのです。おまけに新開発した8速のミッションもスムーズに繋がって心地いい走りをサポートしています。そしてFRらしく、後ろ足で蹴りながら加速していくフィーリングは、最近のFF(前輪駆動)の引っ張られていく感覚とは異質の心地よさです。
市街地では適正なギアを的確に選びトルクフルな走りに役立ち、高速では効率のいい省燃費走行と静粛性の高いクルージングを実現してくれるのです。走行中に燃費計の数字に時折目をやると20km/L前後を行ったりきたり。かなり燃費は良さそうなのですが、この点に関しては、もう少し走り込んでチェックしてみたいところです。