一方で、気になる点と言えばアイドリングストップからの再始動時の「ブルン」と言った少々大きめの衝撃です。この辺はせっかくのプレミアム感を少しばかりスポイルします。さらにもう一点、リアのサスペンションの硬さです。路面の繋ぎ目などから受けるショックを大きく拾ってしまうので、衝撃と音がやはり気になります。今回試乗したのが、スポーティな仕様だということも影響しているのでしょうか? もう少し、すっと、しなやかにいなしてくれるようなサスペンションの仕立てが欲しいと思いました。
確かにコーナリングが連続するワインディングでは、心地いい切れ味を見せることもあったのですが、普段使いのごく自然な走りの中にあって、硬さが目立つのは少々、気になる部分でもありました。
走りを試し、概ね満足したところで、市街地を抜けてスタート地点に戻り、駐車しながらふっと気が付いたことがありました。それは小回りの良さです。カタログを確認すればこのクラスとしては最小の部類に入る5.4m。これもFRとなったことで、前輪の舵角を大きく確保できたからこそ可能になりました。大きめのボディにとって、小回りが効くことは本当にストレスを軽減してくれるのです。
選択枝の多さは確かに嬉しいが…
さて、現状ではディーゼルのマイルドハイブリッドを試すだけに留まっていますが、これからは2.5Lのガソリンエンジン仕様や3.3Lディーゼルターボ仕様、そしてPHEVなどが加わってきます。現時点での価格帯は299万2000~626万4500円です。ここで「ん、ちょっと待てよ」となりました。エントリーモデルはギリギリながらも200万円台であり、最上級モデルは倍以上の価格差です。エントリーモデルを購入した人にとっては「この価格でプレミアムのCX-60に乗れる」となるのです。
しかし、一方の上級モデルオーナーにとってみれば、「半額のモデルに見られはしないか?」という懸念が生じかねないのではないか、と心配になります。かつては、商用モデルを作るとイメージが損なわれるかも、ということでラインナップしなかったというクルマもありました。今や時代は変わったというものの、いまでもプレミアムカーにとって、イメージは重要事項だと思います。
さらにこの幅広い価格帯に加え、最終的に全23種にもなるグレードから、自分に合ったベストを探さなければいけません。多様化の時代ですから、これこそ大歓迎の品揃え、と言いたいところですが、その中から「ベストCX-60」をセレクトするのは、それなりのストレスになるかもしれません。案外、プレミアムモデルを求める人は「一番高いもので」といった、ある種の面倒くさがりの人もけっこういるものです。この人たちにとって、プレミアムのイメージはどんなものかを考えると、クルマの出来以前の問題で心配になってしまいました。
同時にライバルの件も浮上します。500万円以上の価格帯だけで考えるなら輸入車ブランドを中心とした争いですが、この価格帯で考えるラインナップになると、そうとばかりも言っていられません。トヨタRAV4や新型になったばかりの日産エクストレイル、三菱アウトランダーなどともがっぷり組み合って戦うことになります。マツダのラージ戦略、何とも悩ましい選択になりそうですね。