トレンド

衣食住すべてが充実した無料の最高級ホテル 「永久に出られない」と言われたら?

オバ記者:お金持ちになっても変わらない部分って案外多いのよ。都心の一等地にビル2棟持っている知人がいるんだけど、70代のその女性は、住まいがある千代田区から配布される無料の入浴券で銭湯に行って、その帰りに100円ショップで買い物するのが無類の楽しみだっていうの。成功してお金を山ほど手に入れても、その昔、浅草の隅で貧乏していた頃に戻れるからいいんだって。自分の根っこがそこにあるんだねぇ、きっと。
 
 そういえば、彼女はそれなりにブランド品を持っていて、私にも24金のすごいブレスレットをくれたことがあったけど、あれ、売っちゃった。

橋本:なるほど。派手すぎるブランド品は自分にフィットしない気がして、本能的に売ってしまった。モノに左右されないというか、地に足がついた生活を無意識のうちに保とうとしたわけですね。

オバ記者:いえいえ、単にそのとき生活に困っていただけ。ブレスレットを見つめていてもお腹はふくれないし、家賃も払えないでしょ。

橋本:ハハハ。

オバ記者:そんなわけで、超高級ホテルであっても、そこから出られないんだったら、私はゴメンだわ。町の貧乏ネズミでけっこうよ。

動物園の動物たちは満足していない?

橋本:では、「最高級ホテル」の話に戻りますけど、実はこれ、「動物園」のことなんです。

オバ記者:へ?

橋本:世界各地の動物園は1970年代以降、それぞれの飼育動物にとって自然な生息環境を再現しようと努めてきました。鉄格子を撤去し、コンクリートの床を草地に変え、樹木を植え、池や丘を造りました。
 
 体調管理や成長を考慮した適切な食事を過不足なく摂ることができるよう、食生活も充実させました。不調やその兆候があれば、いち早くドクターたちがケアする態勢を整えました。動物たちは生きていくのに必要なものを与えられ、労働を強いられることなく、ゆったりした一日を過ごせるようになりました。

オバ記者:確かにまぁ……恵まれた環境よね。

橋本:にもかかわらず、動物園の動物たちは必ずしも満足していません。2008年には米ロサンゼルス動物園で、29才のオランウータンが逃亡を試みたそうですし、2007年には米サンフランシスコ動物園で、4才のシベリアトラが塀を飛び越えて、数人の客を死傷させた後に射殺されています。こうした事例は世界各地で見られます。

オバ記者:わかるわぁ、その気持ち。逃げ出したくなるわ。どんなに満ち足りた環境を用意されても、それが自分に合っていなくて何日も続いて、そこから永久に出られなかったら精神が不安定になるもの。それこそ「贅沢な監禁」よ。

橋本:野原さんは19年間連れ添ったネコとお別れしたそうですが、また飼いたいと思いますか?

オバ記者:その願望はあるんだけど、これまで同様、「外に出せる環境」を用意できるかどうかなんだよね、問題は。彼(彼女かな?)にとっての世界が家の中だけで、窓から外を眺めるだけで一生が終わるなら、何のために生まれてきたのよ、って思っちゃう。外に出て、ほかのネコと追いかけっこしたりけんかしたり。そういう経験がまったくないのは生き物としてどうなのかなって、動物園の話を聞いたら、よけいにそう思える。

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。