「私には貯金の習慣がない」と公言してきた『女性セブン』の名物記者・オバ記者こと野原広子さん(65才)。とかく50~60代の女性は、夫の定年退職や親の介護などでお金が入り用となって苦労するが、野原氏は「まとまったお金がなくてもやりくりできるし、毎日、幸せに暮らせている」と言う。
行動経済学に詳しい昭和女子大学現代ビジネス研究員の橋本之克氏との対談形式で、オバ記者の消費行動をひもとく。【全3回の第3回。第1回から読む】
「極上の贅沢」に勝るものなんて……ある?
《その最高級ホテルには、豪華な食事とゴージャスな部屋が用意されている。プールサイドで過ごすもよし、エステを受けるもよし。夜はキングサイズのベッドが心地よい。にこやかなスタッフたちが控え、最先端の医療サービスだって受けられる。しかも、これらすべてが無料だ。ただし、条件が1つ……》
橋本:誰もが魅了される、贅沢この上ないホテルライフだと思いません?
オバ記者:しかも、すべて無料ってのがいいわね。で、ただ1つの条件って?
橋本:はい、一度チェックインしたら、永久に出られないんですよ──。
オバ記者:えっ、一度チェックインしたら、永久に出られない!? なら、絶対行くもんか。
橋本:おっ、野性のカン? 何か引っかかりますか?
オバ記者:高級っていうのはね、貧乏していてたまにやるからうれしく感じるのよ。どんなに素敵な景色だってひと通り見たらね、3日くらいは感動が続くけど、それが日常になったら、途端にありがたみがなくなっちゃうのよ。
橋本:なるほど、「美人は3日で飽きる」っていいますもんね。食べ物だってそうですよね。
オバ記者:そう、おいしすぎるものって、案外、飽きるのが早い。普段よりちょっとおいしいくらいがいいのよ。ほら、昔あったCMで、外で思い切り気を張って英語使ってバリバリ働いているキャリアウーマンが、家に帰ってくるなり玄関でヒールも脱がずに「あぁ、しば漬け食べたい」ってつぶやくのがあったじゃない……山口美江でしたっけ。
橋本:あぁ、覚えてます。
オバ記者:あれよ。衣食住どれにでも、自分が育ってきたなりの相場感ってあるじゃない。そこから大きくかけ離れたらダメなのよ。さっき先生も相場感の話をしてたけど、その人がもともと持っている相場感と現実にギャップがありすぎたら喜びどころか、ただのストレス。人の相場感って、そんなに変えられるもんじゃないから。
橋本:相場感は経験の積み重ねでできるものですからね。