快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた

16代目「クラウン」試乗レポート “トヨタブランドの頂点”はどう変わったのか

シンプルにして爽快感のあるインテリアには好感。ただ細部にちょっぴりプラスチック感が見える

シンプルにして爽快感のあるインテリアには好感。ただ細部にちょっぴりプラスチック感が見える

 そんな全体のエクステリアに満足しながらドアを開けて乗り込んでみました。実はここで「ん?」と思ってしまったポイントがありました。それはドアの開閉感と、室内の質感です。ドアを開け閉めしたとき、高級車のイメージの重厚さというか、バフッといった締まり方ではなく、どこかガチャッといったフィールがあり、プレミアム感は少しスポイルされたのです。そんなドアの感じを引きずりながら乗り込んだ室内は、ちょっぴりプラスチック感がちらほら。別にウッドやレザーをふんだんに使用することが高級車だ、という感覚はすでに持っていませんが、どこか質感や操作感にコストダウンの感じが見えてくるのです。本来なら、そういう手法を見えにくくすることが上手いトヨタなのに……。

 もう一点、エンジンの撮影をする際のことです。エンジンフードを開けようと持ち上げてから、そのままダンパーの力でボンネットは開いてくれると思っていましたが、バシャッという音とともに閉まったのです。そう、高級車の多くに装備されていると思っていたダンパーが付いていなかったのです。「これもコストダウンか」と思いましたが、ちょっと冷静に考えてみました。クラウンユーザーのどれぐらいの人が自分でボンネットを開けるだろうか? その頻度はかなり低いはずであり、ここでのこだわりは不要かもしれません。ただ、そういった細かなところでプレミアム感は維持されるもの、とも思うのは、もはや古い感覚なのでしょうか。

クラウンの新しい立ち位置?

 ちょっぴりモヤモヤした気持ちを抱きながら走り出してみました。FFベースとはいえ、今回試乗している「クロスオーバーG・advancedレザーパッケージ」は4WDです。186馬力の2.5リットル4気筒エンジンに、フロント119.6馬力、リア54.4馬力を発生するモーターを組み合わせたハイブリッドです。スルスルッと大人しく、しかしトルクフルに加速していく感覚は良好です。さすがはハイブリッドで一日の長を持つトヨタ、その感覚はプレミアムと言っていいフィールです。

 静粛性においてはBEV(バッテリーEV)と比べてしまうと、スムーズネスや静粛という点では、手放しで最高とまではいえませんが、かといってストレスを感じる感覚ではありません。ハイブリッドですからアクセルを踏み込んだりしたとき、時折エンジンが存在感を前面に出てきますが、細かな振動やエンジン音は予想できる範囲で、決して不快なレベルではなく、十分にクオリティは保たれています。

 サスペンションもしなやかさを感じさせてくれ、コーナリングでもフラット感をもってクリアしてくれます。高速でのレーンチェンジは4WS(4輪操舵)ということもあり、安定しています。腰高な感じは少しありますが、走行フィールはなり心地も満足レベルです。ただ、これが「トヨタの考える最上か」、と言われれば即答できないのです。もし、これまでのクラウン的な走りの味を求めるなら、セダンの発売を待ってからでも、と考えてしまいますが、なんともはっきりしない印象です。

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