多くの市場関係者は「トランプリスク」を経済面からとらえているが、もう少し根が深いのではなかろうか?
ヒラリー・クリントン候補が金融機関から日常的に多額の講演料を得ていたことが報道されているが、彼女は現在の国際金融システムにおける強力な支援者である。
世界経済はグローバルに展開する欧米系金融機関が中核にあって、彼らが世界中から資金を吸い上げ、それを再分配することで世界が発展する仕組みとなっている。それは、いわば金融至上主義経済と称することができよう。
彼らは単に、株式売買の仲介や、自分たちの資産運用だけを行っているわけではない。IPO(新規上場)支援、企業金融、資産金融、M&A、財務顧問など、いろいろな形のファイナンス業務を通じ、新規産業、成長産業を発掘・育成し、金融を通して世界を発展・繁栄に導くといった重要な働きをしている。
しかし、彼らはあくまで収益を最大化させることを目的とする営利企業である。巨額の資金があれば大よそ何でもできる。政治にも、マスコミにも、影響力を行使できる。軍事産業とも良好な関係を築くことができる。言うまでもないが、自らが巨額の報酬を得ることもできる。
“経済がうまく回っていれば問題ない。アメリカ経済は好調ではないか”といった反論もあろうが、問題は成長ではなくその歪んだ分配にある。