この1年半で約30個のランドセルリメークを手掛け、特に印象に残ったのは「20年もの」だった。
「20年近くクローゼットに入っていてボロボロだけれど、持ち主のお母さんが“それでもやっぱり捨てられない”と持ってきて、なんとか残したいという思いに心を打たれました。ごきょうだいで赤と黒のランドセル。すでに素材を曲げられない状態だったので壁掛けの時計と写真立てにして渡したら、“こんな状態でもやってもらえた”と驚いてくださいました。後にも先にも、このときがいちばんうれしかったです」
思い出を作っていくのは時間がかかる
ジュエリーも生まれ変わる。東京・銀座や渋谷などに店舗を持つ「ジュエリー工房 夢仕立」は、ジュエリーのデザインや装飾を一新する「ジュエリーリフォーム」を行う。運営元のライム商会の依田優子さんが語る。
「思い出のジュエリーをお直ししたいというお客さまだけではなく、母親や祖母から譲り受けたジュエリーをリフォームして使いたいというお客さまの依頼が多くあります」
あるとき、店を訪れた女性がこんな依頼をした。
「記念日ごとに夫にもらったダイヤモンドを全部使い、ひとつのジュエリーにしたい」
依田さんが振り返る。
「不慮の事故で亡くした夫の思い出をひとつのリングにまとめたいとのことでした。時間をかけてデザインを練り、完成したリフォームジュエリーはとても喜んでもらえました。夫婦の思い出とともに、とても大事にされるのだろうと深く印象に残っています」
高価になりやすいジュエリーこそ、いつまでも近くに置いてほしいと依田さんが語る。
「ジュエリーはお金にも換えられるので買い取りが多くなりがちです。ただしジュエリーをお金にして使うことはあっという間ですが、思い出を作っていくのは時間がかかる。いい思い出が残るものは、自分を幸せにしてくれる品物として手元で大切にしてほしいと思います」