「ミニマリスト」「シンプルライフ」などモノを持たない生き方がクローズアップされているが、思い出のモノがなかなか捨てられないという人は多い。なかには、壊れたモノやもう使えなくなったモノでも、なんとかして残したいという人もいるのではないか。そんな思いをサポートすべく、様々なモノをリメークして生まれ変わらせる人たちがいる。
子供時代の思い出が強く刻まれているランドセル。そのリメークを行い、新たな命を吹き込むのが、山梨県・市川三郷町にある「カウワーカー」の革職人・上田彩さんだ。
「亡くなったおばあちゃんが娘に買ってくれたランドセルをリメークしてほしい」
そんな声が上田さんに寄せられたのは2018年。成人式を迎える娘への贈り物として、かつて祖母が購入したランドセルを日用品に作り替えてほしいとの依頼だった。
「このときはランドセルから切り取った素材に別の革を合わせ、写真立てと手帳、ペンケースと家族全員分のお揃いのキーホルダーを作りました。形がそれぞれ特徴的で、ご家族の皆さんが驚いて喜んでくれました」(上田さん・以下同)
以降、口コミで評判が広まった。そこで気づいたのは「ランドセルを捨てられない人」が多数いることだった。
「6年間ずっと大事に背負っていた人や、買ってくれたおじいちゃんやおばあちゃんが亡くなった人。さまざまな背景があり、簡単にランドセルを捨てられないというかたが結構います。ずっとしまっていたけれど、何か形に残るモノにしたいとして、節目の時期にリメークを依頼されるケースが多いんです」
リメーク中は、刻まれた記憶になるべく手を入れないよう注意する。
「傷や汚れ、落書きは大切な思い出なので、なるべくきれいにしすぎないよう心がけています。一人ひとりにストーリーがあり、落書きを見て“あぁ、そういえばあのときに書いたっけ”などと思い出せるようにしています」