10月に入って食品や日用品、外食などあらゆる品目で値上げラッシュが本格化している。この値上げに拍車をかけているのが円安だ。
日銀の黒田東彦総裁が「黒田バズーカ」と呼ばれる異次元の金融政策を取ってから早10年、欧米をはじめ各国の中央銀行がインフレ封じ込めのために大幅な金融引き締め(利上げ)に転じるなか、世界で日銀だけがマイナス金利政策を続けている。
「金融緩和を続けることには全く変わりないので、当面、金利を引き上げることはない」
そう黒田総裁が口を開くたびに市場では円が売られ、為替レートは24年ぶりの超円安水準となっている。円安が進むほど輸入物価が上昇し、商品の再値上げ、再々値上げをもたらす悪循環だ。
だが、その黒田氏は来年4月に総裁任期を迎えて交代する。
「新しい資本主義」を掲げる岸田首相はアベノミクスの金融緩和路線の転換を考えているとされ、政府内ではすでに後任総裁人事に着手、早ければ年内にも後任が固まると見られている。
金融シンクタンク「東短リサーチ」社長でチーフエコノミストの加藤出氏が指摘する。
「現在は岸田政権の認識と黒田日銀の方針が非常にチグハグになっている。岸田政権は物価高を抑えなければ国民の不満が高まると心配してガソリン価格上昇を補助金で抑え込む政策を取っているのに対して、黒田日銀は物価を下げるべきだとは全く考えていません。それというのも日銀は安倍政権時代に政府との間で毎年物価が2%上昇する経済にするという協定(アコード)を結んで共同声明を発表している。
黒田総裁がなぜ、金融緩和方針を頑なに変えずにいられるかというと、その共同声明を“錦の御旗”にしているからです。政府が明確に物価を下げるという政策にするなら、安倍政権時代に決めた共同声明を変える必要があります」
次期総裁はインフレを放置するか、食い止めるのか、日本経済の難しい舵取りを担うことになる。