使いやすいサイズと走破性の高さで「タフギア」として知られるミドルクラスSUV、日産「エクストレイル」の4世代目モデルが今年7月に登場した。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、自動車ライターの佐藤篤司氏が、実際にエクストレイル「e-4ORCE」に乗って感じたその「変身ぶり」をレポートする。
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新しいエクストレイルの外観は、これまで受け継がれてきたタフギア感がしっかりと表現されていて、まずはひと安心です。実は実車を目にするまで「今度のエクストレイルは、ちょっぴりお上品になった」という前情報を耳にしていたため、これまで受け継いできた流れから少し外れ、軟弱になっていたらどうしよう、という懸念があったからです。最近、クーペ風やアーバンテイストといった表現を使うSUVが幅をきかせているだけに、エクストレイルまで「SUVらしい力強さ」が希薄になっていたらと少々心配していましたが、杞憂に終わりました。
初代も2代目もエクステリアは箱形であり、見るからにタフで使いやすいクルマということが理解できました。そして先代の3代目はちょっぴり色気を出したのでしょうか、都会的なおしゃれ感も加味した外観で、個人的にはあまり刺さりませんでした。ところが今回は、タフ感と洗練されたおしゃれ感とのバランスがよく、新型が目指した「新世代タフギア感」はうまく演出されているように感じたのです。とくに押し出し感のあるフロントマスクとボクシィさ、さらにリアスタイルのどっしり感など、各面のデザインの融合をうまくこなしているのです。これならば、街の車群れの中に紛れ込んでも十分に存在感を示すことができるはずです。
贅沢さを感じるドライバーズシート
そんなエクステリアに安心しながら、ドライバーズシートに腰を下ろしました。実はここに大きな変化を見つけました。シートなどの仕立てはオプションとなるタンカラーのナッパレザーが装着されていたこともあいまって、贅沢な雰囲気がたっぷりだったのです。とにかくレザー類の表皮はしっとりとしていて心地よく、背もたれや座面に施されたステッチがちょっぴり贅沢な気持ちにさせてくれるのです。
正直に言えば、タフギアには似合わないとも一瞬思いました。でも、いざこうして心地いいキャビンに包まれて快適に走り出してしまうと「これも悪くない」と、なってしまいます。少々軟弱かもしれませんが、この細かい部分のチリまでしっかりと合わせながらの上質な仕立ては、タフギアの本質を忘れてしまうほど居心地がいいのです。そして、思いました。泥だらけの外観と埃ひとつないようなキャビンのアンバランスさも、けっこうカッコいいのではないか、と。車格こそ違いますが、レンジローバーの立ち位置にも通じるものを感じたのです。