円安の長期化や原材料費・輸送コストの上昇、政情不安や地政学リスクなどを背景に、日本企業の「脱・中国」の動きが加速している。生活用品メーカーのアイリスオーヤマは、この秋、中国で生産する約50種類の製品の製造を国内の3工場に移管することに決めた。また、パナソニックホールディングス傘下で生活家電などを担当する事業会社は、中国に集中していた生産を国内やその他のアジア各地に分散し始めた。
一方、日本企業の中国依存度が変わらず高いことを示すデータもある。別掲の表は、中国事業を積極的に進める上場企業50社の株価をもとに算出されていた「日経中国関連株50」の構成銘柄の有価証券報告書などから、売上合計に占める「中国市場の比率」を高い順に並べたものだ。
1位のTDK以下15位まで、日本を代表する大企業がずらりと並ぶ。なぜ、ここまで中国市場への依存が高まったのか。経済ジャーナリストの森岡英樹氏が解説する。
「14億の人口を抱える中国は、所得水準の上昇により世界最大の消費地として魅力的な市場へと変化しました。また、中国企業の高成長により、スマートフォンや電気自動車(EV)などの部品輸出先としても非常に有力です。中国依存度が高い企業にBtoB(企業が他の企業を相手に商品やサービスを提供する取引)関連企業が多く含まれているのはこのためです」(以下、「 」内は森岡氏)
しかし、中国依存度の高い企業ほど「中国にどう向き合うべきか」の岐路に立たされている。
「足元の中国経済はコロナの影響が色濃く残り、これまでの6%台という高い経済成長はもう望めません。中国依存度が増したことによるリスクは、企業ごとにすでに顕在化しています」
例えば、中国の消費者向けにビジネスを展開する企業にはどんなリスクがあるのか。
「ひとたび中国市場に大きな変化があれば、企業の全体収益に与える影響が大きくなります。ベビー用品大手のピジョンは、中国のゼロコロナ対策により出生率が急減したことなどを背景に、中国事業の収益が激減。株価も急落しました。中国国内にユニクロなどを約900店舗展開するファーストリテイリングも、コロナ禍に伴う消費急減の影響を受け、収益が大幅に低下しました」