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日本企業が円安メリットを享受するための「生産拠点の国内回帰」に踏み切れないワケ

 外国人観光客によるインバウンド消費で日本に入ってくるお金は、日銀の為替介入などよりよほど期待できるとみる専門家もいる。アセットマネジメントOneのシニアエコノミスト、村上尚己さんが言う。

「コロナ禍前の訪日外国人客の数は、年間3000万人ほど。この半数が戻るだけでも、GDP(国内総生産)を0.5%押し上げる効果が期待できるといわれています」

 だが、本格的なインバウンド回復には、かつて「爆買い」で日本を騒がせた中国人観光客の存在が不可欠だ。中国ではいまも出国制限がある。

 さらに、景気回復を遅らせている日本の“国民総マスク”の風潮が、諸外国からの入国の足かせになっているとも。明治大学政治経済学部教授の飯田泰之さんが言う。

「もはやマスクをつけないのが当たり前の欧米人にとっては、屋外でも全員がマスクを着用している異様な光景は“日本ではいまもマスクをつけなければならないほどの状況です”“よそ者は日本に来ないでください”と言っているような印象を与えかねません。この空気を変えない限り、大幅な回復は難しいのではないでしょうか」

「1ドル=180円」の最悪のシナリオ

 インバウンドで景気が回復、輸出企業の製造拠点が国内回帰して内需が拡大──もし今後、そんな理想の社会が訪れたら、昭和後期に世界から「ニッポン株式会社」といわれた、華々しい時代が戻ってくるかもしれないと、浅井さんは言う。

 だが、それには大きなハードルがあるようだ。

「もう一度、世界最先端の技術や製品で世界を席巻するためにはまず、アメリカから見た日本の人件費が、中国以上に安くなる必要がある。高度経済成長期は、いまよりもずっと円安だったのです。当時の為替レートは1ドル=180~230円。このレンジにまで円安が進めば、アメリカの企業が生産拠点を日本に移転することも充分に考えられます」(浅井さん・以下同)

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