ここ数年、財布を持ち歩かなくてもスマホ1台でほとんどの買い物が済むようになった。キャッシュレス化が急速に進む中、給与の受け取り方についても、現金以外の選択肢が生まれようとしている。来年4月に解禁される見通しの「デジタル給与」だ。
労働基準法第24条は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めている。そのうえで、従業員の同意があれば銀行口座などへの振り込みも認められる。厚生労働省は年内にも省令を改正することで、スマホ決済口座も支払い対象に加える方針だ。
企業が従業員の「PayPay」などのスマホ決済アプリの口座に、給与を振り込むことができるようになるわけだが、はたして生活はどう変わるのか? 現段階では不安の声のほうが多いようだ。
もし会社から「給与はデジタルにするから」と言われたら…
メーカーに勤務する20代男性・Aさんは、「給与までデジタルにするは必要ない」という立場だ。
「財布を持たなくても、スマホだけで買い物できるようなり、便利になりました。だからといって、給与までデジタルにする必要はないと思うんです。あくまで選択肢の1つとしてならいいですけど、強制されたら面倒だなと思います。もしも、急に会社から『給与はデジタルにするから』と言われたら、どうしたらいいのか……」(Aさん)
Aさんの場合、メインで利用するスマホ決済の支払いがクレジットカードに紐づいている現状から、現金が振り込まれなくなるのは困るという。
「スマホ決済にいちいち銀行口座からチャージする必要がなくなる人はいいかもしれませんが、僕がよく利用するスマホ決済はApple PayでiDを利用。これは結局口座引き落としのクレジットカード決済なので、現時点では、僕にとっては銀行口座にお金が振り込まれないと、生活が不便になりそうです。
それにもし会社が『PayPayで振り込む』と言ってきたら、わざわざアプリを新しくダウンロードしなければならなくなるのも面倒。あまりスマホ決済サービスを増やしたくないんです」(Aさん)