選り好みさえしなければ、希望者全員が大学に入れると言われる大学全入時代が近づいている。いわゆる“Fラン(=Fランク)”と呼ばれる受験偏差値の低い大学の存在もクローズアップされるが、基礎学力が低い学生のレベルが問題視されるのと同時に、そこで教鞭をとる教師たちの態度にも問題があるのではないか、と指摘する声がある。
Fラン大学の教員たちのなかには、学生たちを頭ごなしに「バカだ」と貶す者も一定数いるという。こうした教員の姿勢は、学生にも少なからずネガティブな影響を与えかねない。その実態について、複数の大学教員に話を聞いた。
「自分はこの程度の大学にいるべき人間ではない」
某私立大学に勤務する教授のAさん(40代男性)は、他大学から着任してきたばかりの女性教員の言動に違和感を拭えないと語る。
「私の勤務校は、受験偏差値50を切るFランと呼ばれることもあるレベルの大学です。今年、地方の私立大学から移ってきた年配の女性教員がいるのですが、彼女が『この大学の学生は本当に頭が悪くてストレスが溜まって仕方ない』『当たり前のことを知らなすぎる。高校まで何を勉強してきたのか!』と、他の教員たちに不満をぶつけているんです。
教授会などでも、『ここの学生はバカばかりだ』『どんな育ち方をしたらこんな若者になるのか』などと罵詈雑言の嵐で……。正直、長年うちの大学で働いている人間からすると、非常に複雑な気持ちになります。
その一方で、そういった彼女の態度は学生にも伝わるようで、授業評価アンケートの結果も芳しくない。『あの先生は怖くて、課題も多くて授業を受けたくない』という声も聞こえてくるんです。受験勉強という尺度で“頭が良い学生”を受け持ちたいのであれば、そもそも自身が高偏差値帯の大学に勤務すべきでしょう」(Aさん)
Aさんによれば、必要以上に学生を貶めるような発言をする教員は、「一定数いる」という。とはいえ学生は、大学組織にとっては大事な「顧客」でもある。自らFラン大学の教員を志願し、採用されているにもかかわらず、なぜそこまで勤務校の学生を「頭が悪い」と非難するのか。その心理について、Aさんはこう推察する。
「正直、『Fラン大で働く自分』に対するコンプレックスの裏返しでしょう。大学は、必ずしも偏差値が高ければ良い教授がいるというわけではなく、Fランと言われる大学にも研究者としての高い能力、業績を持つ人はいます。
しかし、なかにはFランで働くことを不本意に思っている人もいる。ネームバリューのある大学で働きたくても、そのポストを得られなかった教員のなかには、『自分はこの程度の大学にいるべき人間ではない』というプライドがあり、必要以上に学生たちを見下すのではないかと思います」(Aさん)