米中間選挙が11月8日に投開票となる。選挙予測で信頼度の高い「FiveThirtyEight」の最新データによると、上院は民主党が辛うじて過半数を取り、下院は下馬評通り共和党が過半数を獲得する見通しだ。米議会はねじれ状態になり、「バイデン・レイムダック政権」は、大統領選挙までの2年間、ますます身動きが取れなくなる。そして、このジョー・バイデン大統領の苦戦が、急速なドル高・円安の背景だという見方がある。
米議会では共和党が多数になる下院が予算審議で優先権を持つ。当然、バイデン大統領は直面するインフレ・物価対策で共和党の主張を無視することはできない。その共和党が選挙戦の最終コーナーを回ってテレビ、ラジオ、ネットで連日連呼しているのは「インフレ」「物価高」だから、このテーマは新しい議会で最初の対決案件になりそうだ。
ところが、今のところ共和党候補たちは、自分たちが勝ったら何をするか、具体的な施策にはあまり言及していない。せいぜい、政府のばら撒き支出阻止、企業優遇税復活と高額所得者への減税など従来からの党の主張の範囲だ。
「有権者はインフレ阻止とガソリン価格引き下げといった身近なことしか耳に入らない。国民総生産(GDP)とか雇用率が上がったといった抽象的な経済指標などには関心を示さない」(保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」のマイケル・ストレイン上級研究員)
だからなのか、大衆へのアピールが得意なドナルド・トランプ前大統領を支持する候補たちがネットで流すメッセージは、「バイデンの失策でガソリンが高騰している」「記録的インフレ率、犯罪の増加はバイデンのせいだ」「罪なきトランプ前大統領に対する魔女狩りをやめろ」といったところ。
熱狂的なトランプ支持者であるロサンゼルス近郊に住む自営業のフレッチャーさん(55)は、そうした言葉を疑わない。
「トランプ共和党が勝てば、ドラスティックな改革をするはずだよ。ドル高・円安で日本人は困っているんだって? トランプならなんとかしてくれるよ。彼は日本びいきだから、日本人にいいようにやってくれるさ」と、筆者にまでリップサービス(?)してくれた。