快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた

トヨタ・新型シエンタ 全長や全幅は旧型と同じでも「かなり広くなった」と感じる理由

乗り降りがしやすくなった

 旧型シエンタはJPNタクシーのベースにもなったほど居住性や高い実用性を持っていたのですが、新型はさらに成長していたことになります。全長や全幅は旧型と同じですが、全高を20mm高くしました。わずかかもしれませんが、頭の上の圧迫感が少しでも軽減されると、心理的にもかなり広くなったように感じるもの。こうした重箱の隅をつつくような改良は日本メーカーが得意とするところ。

 そこからさらにチェックを進めると、スライドドアの開口部の高さが高くなっていることに気がつきます。スペックでは60mm高くなっているのですが、これまで乗り降りで頭を少し下げていた人が、頭を上げたまま乗り込むことだってできるわけです。さらに「スマートキーを携帯した状態」で、フロントドアハンドルの直下の床下にあるキックセンサーのところに足を出し入れすると、スライドドアが開閉する機能まであります。一部オプションとはいえ、両手が塞がっているときにはとくに重宝する機能です。5ナンバー枠に納めるという厳しい制約の中で、こうした最新の機能を与え、さらにサイズをギリギリまで拡大しながら、乗降性や居住性を向上させてきたのです。

使いやすさの本質

 ミニバンにとって重要なシートアレンジの扱いやすさも同じです。初代モデルからシートアレンジなどは「片手でポン」と行えるシンプル操作が支持されていました。メカに苦手な人向けというだけではなく、操作の数が少なければ少ないほど助かるのは、誰もが感じる恩恵なのです。たとえ便利な機能でも、いくつも段階も踏まないと、便利さにたどり着かないというのでは、使うのが億劫になったりして、結局は宝の持ち腐れとなることも。ところが新型はシートアレンジのパターンこそ増えてはいませんが、2列目や3列目を倒してフラットにする作業が、まさに片手でパタパタという感じで、より簡単になりました。

 そんな進化した実用性を確認し、満足したところで、トヨタの「TNGA」と呼ばれる最新のプラットフォームを採用した走りをチェックするために街に乗り出しました。このプラットフォームは「走る・曲がる・止まる」というクルマの基本性能を飛躍的に向上させていることで評価を得ていますが、確かに静かで走りもビリビリとした振動なども感じることなく、なんともスムーズ。

 この走りのために用意されたパワートレーンは、1.5Lエンジンとモーターによるハイブリッドと、1.5Lのガソリンエンジンが用意されています。その価格差は同じグレードどうしの比較で35万~50万円ほど。旧型より全体的に10万~20万円ほど値上がりしていることを考えると「ガソリンモデルでもいいかなぁ」とも思います。一方で、気になる燃費はガソリンモデルのZ(2WD/256万円)の7人乗りで18.3km/L、ハイブリッドは最上位のZ(2WD/291万円)の7人乗りが28.2km/Lと10kmほどの違いが。ここは実に悩ましい選択になりそうです。交通の流れがスムーズな地方で使うならガソリンでもいいけど……。

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