政府はこれまでに少子化対策として様々な支援策を打ち出してきたが、出生率の低下に歯止めがかからない。国立社会保障・人口問題研究所が9月に公表した「第16回出生動向基本調査」によれば、結婚意思がある18~34歳の未婚男女の「希望する子供の数」も1982年以降、低下傾向が続き、2021年には男性が1.82人、女性は初めて2人を下回り1.79人となった。こうして単身世帯が増加し「ソロ社会」化が加速する日本には何が待ち受けるのだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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私は1989年に『平成維新』(講談社)を上梓して以降、日本を政・官・財の“鉄のトライアングル”が支配する「提供者(ノイジー・マイノリティ)主権の国」から「生活者(サイレント・マジョリティ)主権の国」に改革するための努力を懸命に続けてきた。1994年には新しい日本をつくるネクストリーダー養成学校「一新塾」を創設し、これまでに国会議員、自治体首長、地方議員合わせて220名を輩出している。
さらに、本連載などで「低欲望社会」になって低迷から脱することができない日本の現状に警鐘を鳴らし、中央集権から地方分権(道州制)への統治機構改革案をはじめ、抜本的な少子化対策案や教育改革案など、この国を再び成長・発展させて若者に希望を与える政策案を数多く提言してきた。
しかし、それらの問題を歴代政権はことごとく放置してきた。岸田文雄政権も「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」「科学技術立国」「デジタル田園都市国家構想」「全世代型社会保障の構築」「構造的な賃上げ」など看板だけは次々と掲げているが、補助金をバラ撒くだけで抜本的・効果的な政策は皆無に等しい。
「おひとりさま」ビジネスの限界
一方、今の日本は「ソロ社会」化が加速している。
2020年の国勢調査によると、世帯人員別の一般世帯数は単身世帯が最も多い2115万1000世帯で、全体の38.0%を占めている。国立社会保障・人口問題研究所は、単身世帯が2025年に1996万世帯、2030年に2025万4000世帯になると推計していたが、それをはるかに上回るスピードで増加しているのだ。
では、このソロ社会にどう対応するか? これまでビジネスの世界では不特定多数を対象にしたブロードキャスティングから狭い範囲のターゲットを狙うナローキャスティングに移行してきたが、今後は個人をターゲットにしたポイントキャスティングが主流になる。