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円安を逆手に海外企業の生産拠点誘致を 日本が「世界の工場」になれば経済は復活する

「世界の工場」化で円安局面を経済復活の起爆剤へと変えられるか(Getty Images)

「世界の工場」化で円安局面を経済復活の起爆剤へと変えられるか(Getty Images)

 32年ぶりの1ドル=150円突破と、急激な円安を受けた日本政府の為替介入により、市場の動揺が続いている。が、日本政府がどう対応しても、アメリカのインフレが続く限りドル高は収まらない。第一生命経済研究所の首席エコノミストである永濱利廣氏が語る。

「いま起きている円安の原因は日米の金融政策の違いにあります。アメリカは量的引き締めを行ない、利上げしている。一方、日本は量的緩和を続け、イールドカーブコントロール(長短金利操作)を貫いている。両国の政策がまったくの反対方向を向いているため、円を売ってドルを買う動きが続いてきました」

 円安を食い止めるべく、政府・日銀は「ドル売り、円買い」の為替介入を行なっているが、瞬間的に回復しても、すぐ円安に戻ってしまい、円高方向に転換させるには至っていない。

 円安を受けた物価の高騰は私たちの生活に直撃している。10月から食料品や電気・ガス、家電などが高騰。『みずほリサーチ&テクノロジーズ』は1ドル=150円の水準が続けば、2人以上の世帯の家計負担額は昨年比で平均8万6462円増にもなると発表した。この円安はいつまで続くのか。永濱氏が続ける。

「輸入食品は高騰しているといっても、すでに原油などの一次産品系はピークアウトしており、来年早々にもこの円安はピークアウトするとみています。世界各国が物価を抑えようと利上げしているので、世界経済が後退傾向にある。現に、1バレル=130ドルほどだった原油価格がピークアウトして今は1バレル=80~90ドルほどです。アメリカは利上げの影響で景気が後退に向かっているので、近く利上げペースも徐々に落ち着くはず。そうなれば円安も止まるでしょう」

 家計にダメージを与える円安だが、一方でメリットもある。永濱氏は、円安が「日本経済復活の起爆剤」にもなりうると話す。

「日本の賃金が安くなっているということは、新たな生産拠点としての優位性が高まります。そうなると、世界中から日本に生産拠点を移す企業が増える。新興国は安い人件費をテコに経済成長したように、日本でも円安を利用して生産拠点の国内誘致を進めれば、経済復活のきっかけになるはずです」(同前)

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