すでに、日本企業の生産拠点の「国内回帰」の動きは進んでいる。電機メーカーのJVCケンウッドは今年、国内向けカーナビの生産をすべて国内に戻しているし、生活用品メーカーのアイリスオーヤマも生産拠点を中国から国内の工場に移し始めたと報じられている。特に海外売上高比率の高い業態においては、円安は価格競争力強化につながる。そこに加えて、海外企業の生産拠点を日本に誘致することで、日本が新たに「世界の工場」として台頭する未来も視野に入る。
かつての円高局面で製造業の多くがその生産拠点を人件費の安い中国などに移したが、それが日本経済の空洞化を招いた側面もある。「失われた30年」の間に日本経済は他国に大きな遅れを取ったが、この円安局面こそ、そこから脱却する好機となるのかもしれない。(了)