32年ぶりの円安・ドル高が続く中、個人投資家の存在感が高まっている。金融先物取引業協会のデータによると、1月に355兆円だったFXのドル円取引額は、9月には単月として初めて1000兆円を突破。それを牽引したのが、“ミセス・ワタナベ”とも呼ばれる日本の個人投資家の存在だ。
FX投資家にとって、激しく上下する現在の為替相場は格好の舞台だ。
日米の金利差拡大を背景に、年初の1ドル=115円が10月には一時150円を突破。政府・日銀によるドル売り円買いの「為替介入」が、むしろ荒い値動きを起こしたようにも見える。
政府・日銀は、介入を公表した9月22日に続き、10月21日夜と10月24日朝にも公にしないかたちでの「覆面介入」を行なったと見られ、その総額は過去最大の9兆円超とされる。だが、それだけの巨額介入も効果は長続きしなかった。
10月21日夜の「覆面介入」では151円台から144円台まで一気に7円以上も円高ドル安に動いたが、週明けの10月24日朝には一時149円台後半まで戻る動きを見せた。それを受けての2度目の「覆面介入」で再び145円台まで4円以上も円高になったものの、翌日には149円台となった。介入直後に円高に振れてもすぐに円安に戻る。まさに「焼け石に水」だ。外為オンラインのシニアアナリスト・佐藤正和氏が言う。
「ここ半年の個人投資家によるFX売買高をみると、ドル買い円売りが際立っている。それが円安進行の一因となっているのは間違いなく、日本経済にマイナス影響を与えているのは否めません。個人投資家の旺盛な売買を考えれば、いくら反対にドル売り円買いの為替介入を仕掛けても、その効果が長持ちしないのも当然でしょう」
酒匂・エフエックス・アドバイザリー代表の酒匂隆雄氏もこう見る。
「FXを手がける個人投資家にとって(今回の介入のように)大きな調整もなく、円安が進み続けた相場展開は利益を出しやすかった」