よく「若者の恋愛離れ」が進行していると議論されるが、別に若者全体が恋愛離れしているわけではないだろう。令和4年版男女共同参画白書で「20代の4割がデート経験なし」「20代男性の3分の2が配偶者・恋人がいない」などというデータも話題になったが、恋人がいない若者は昔から一定数いるわけで、ここ数十年、そこに大きな変化はないという指摘もある。
その一方で、「若者が恋愛しない理由」については、時代による変化もあるだろう。景気が悪く収入が少ない時代には「恋愛する金銭的な余裕がない」というケースも増えてくるだろうし、今までなかったテクノロジーや文化の普及もその要因となり得る。なかにはスマホゲームが当たり前になったことで、恋愛をしなくなったという人もいるようだ。
ここでは、スマホゲームを中心とした人気クロスメディアコンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)にハマって、恋愛に興味がなくなったという複数の男子学生の声を紹介しよう。いったいどういうことなのか──。
都内の私立大学に通う男性・Aさん(22歳)は、恋愛に興味がなくなったのは「ウマ娘」がきっかけだと語る。
「いま『ウマ娘』にハマっています。プレイしたことがない人には説明が難しいのですが、ウマ娘とプレイヤーであるトレーナーの間には、恋愛的な関係性が多々あります。ウマ娘のなかには、プレイヤーに対して恋愛感情を伝えてくれたりする『恋愛強者』の子がいたり、なかには奥手で僕らプレイヤーに対して好きな気持ちを伝えられない子、あるいは駆け引きが下手すぎる子もいる。ファンはそんな子たちを『恋愛弱者』と呼んでいます(笑)。その辺りのキャラクター設定が絶妙で、二次創作もたくさん存在します」(Aさん)
千差万別なキャラクターを持つウマ娘たちに魅了されるようになったAさん。次第にリアルの恋愛へ向かうモチベーションは薄れていったという。
「ゲームをして、二次創作コンテンツを見続けている間に、本当に現実の女子に興味がなくなってしまって……。たとえば、サークルの友人が『最近気になってる子いる?』と聞いてきても『ごめん、誰にも興味ないわ』と答えて場がしらけてしまったり。
僕も大学に入った当初は彼女が欲しくてたまらなかったのですが、今はその感情が湧きません。強がりでもなんでもなく、恋愛に興味を失ったんです。現実の女子にガッツいていた自分が恥ずかしく思えるほど。その理由を自分なりに考えたのですが、“恋の駆け引き”のようなスリルをウマ娘が満たしてくれるからだと思います」(同前)