米中関係が更に悪化する懸念は後退
11月10日に実施された中国の中央政治局常務委員会では、「新型コロナの予防、コントロール業務をさらに一歩進んで優れたものにする二十条」の措置が決定され、11日には具体的な内容が発表された。
会議では「ゼロコロナ政策についてはしっかりと揺るぎなく徹底的に実行する」と強調されたものの、二十条の条文をみると、第一条は濃厚接触者に関する隔離期間について「集中隔離7日間、自宅での観察3日間」といった従来の規定が「集中隔離5日間、自宅での隔離3日間」に緩和、変更されるといった内容であった。また、第十条は入国者に対する第一条と同様の緩和、変更措置だ。
ゼロコロナ政策は堅持されるが、その内容はより精緻なものとなり、景気への影響はより小さなものになりそうだ。
香港ハンセン指数は11月に入り、底打ち反転、リバウンド基調が続いているが、この背景にはゼロコロナ政策の変質があると考えている。
14日夜、対面による米中首脳会談が行われた。中国中央テレビ局の報道によれば、バイデン大統領はこれまで通り「米国は中国の体制を尊重し、中国の体制の改変を求めず、新たな冷戦を求めず、同盟国との関係を強めることで中国に対抗したりせず、台湾の独立を支持せず、二つの中国、一つの中国一つの台湾といった主張を支持せず、無為に中国と衝突しない」と発言した。
米中首脳がこれまでの原則をしっかりと確認したことで、米中関係が更に悪化する懸念は後退した。
ゼロコロナ政策は極めて政治的な政策であるが、米中関係がこれ以上悪化しないとみられる以上、少なくとも輸出産業の集積地などで集中的にロックダウンが起こるかもしれないというようなことは考えなくても良いのではないか。
ゼロコロナ政策の変質は中国経済、株式市場はもちろんだが、グローバル経済、グローバル市場にとっても朗報だろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。