大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

“終身皇帝”目指す習近平氏に暗雲 ゼロコロナ政策は裏目、不動産・金融バブル崩壊危機

習近平氏も安泰ではない?(イラスト/井川泰年)

習近平氏も安泰ではない?(イラスト/井川泰年)

 10月に開催される中国共産党大会で習近平国家主席は異例となる3期目を目指す。「3選」を果たすとの見通しも多い中、経営コンサルタントの大前研一氏は、習氏の3期目入りには不確定要素があると指摘する。どういった問題があるのか、大前氏が解説する。

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 今秋、5年に1度の中国共産党大会が開催される。報道によると、習近平総書記(国家主席)が「3選」を果たして“終身皇帝”になることが確実だという。

 とはいえ、今まさに歴史に残る独裁者になろうとしている習近平も、安泰ではないと思う。

 台湾問題に加え、目下の課題は「ダイナミック・ゼロコロナ(動態清零)」政策だ。独裁国家ならではの徹底的なロックダウン(都市封鎖)で新型コロナウイルスの封じ込めを図っている。

 だが、ロックダウンの拡大によって産業活動や個人消費が打撃を受け、経済が急減速している。今年第2四半期(4~6月)のGDP(国内総生産)は前期比2.6%減で、前年比も0.4%増と第1四半期の4.8%増から大きく減速し、2020年第1四半期の6.9%減を除けば、1992年の統計開始以降で最低の伸びとなった。

 もともと中国に進出した外国企業は、政府の命令に基づく人件費の高騰など様々な問題に直面してきたが、今回は習近平のダイナミック・ゼロコロナ政策による過度なロックダウンでサプライチェーンが大混乱し、多くの企業が生産できなくなってしまった。外国企業にとっては、独裁者・習近平の存在こそが中国最大のリスクとなっている。

 だが、当の習近平は「ゼロコロナ」を、まるで3選を果たして“終身皇帝”になるための勲章の1つと考えている節がある。世界で初めてコロナ退治に成功した国になり、武漢発のパンデミックという“濡れ衣”を晴らしたいようなのだ。しかし、いくら防疫態勢を強化しても国民の大多数が免疫を獲得するまで、ウイルスという“見えざる敵”には勝てないだろう。

 したがって、習近平のダイナミック・ゼロコロナ政策は裏目に出て「世界の工場」と呼ばれてきた中国に対する信頼が大きく揺らぎ、今後の経済成長に少なからず影響を及ぼすと思う。実際、中国に部品の供給や生産を依存していた外国企業の多くは、すでにサプライチェーンと工場の分散・再構築を進めている。

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