日本学生支援機構(JASSO)の「令和2年度 学生生活調査」によれば、奨学金を受給している学生の割合は大学(昼間部)が49.6%、短大(昼間部)が56.9%。学生の2人に1人が借りている計算となり、メディアでも「奨学金破産」といった事例が取り上げられるケースが増えている。新刊『奨学金、借りたら人生こうなった』を上梓したライター・千駄木雄大氏がレポートする。
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奨学金というと、国の機関(独立行政法人)である日本学生支援機構(以下、JASSO)が提供している貸与型奨学金を想像する人が多いだろうが、看護職や理学療法士の仕事に就く意思がある者に対して、自治体や医療法人が奨学金(修学資金・貸付金と表現されることもある)を貸与する、いわゆる「看護奨学金」と呼ばれる制度がある。
この制度では、看護学校や医療系の学校に通い、卒業後に指定の施設で一定期間働けば奨学金の返還額の全額または一部が免除される。
働いている間は給与も支給されるため、一見、学生思いにも感じられるこの制度だが、実はデメリットも少なくない。期間内に退職してしまうと、貸与された奨学金の全額を、一括で返済することを求められる場合が少なくないからだ。
看護師で保健師の前田美香さん(仮名・43歳)は、そんな看護奨学金を活用した結果、苦労をした経験を持つ女性である。
「親の希望もあって、高校卒業後は3年制の公立の看護系短大に進学しました。借りたのは第一種奨学金(無利子)を120万円と、地元の県が提供している『卒業後に200床以上の病院で5年間働けば、返済が免除される』という“お礼奉公”付きの奨学金を120万円で、合計240万円でした」
前田さんは看護師の資格を取得したのち、保健師の資格を取るために他県の国立大学に編入。そこに2年間通ったため、学生生活は合計で5年間となった。
「編入して学生生活が延びたことで、3年間借りた奨学金の返済も先になりました。そして、国立と言っても公立よりは学費が高かったため、新たに第二種奨学金(有利子)を200万円借りました。これで総額440万円ですね」