「今まで働いた分がリセットされてしまい全額返還になってしまうのかな、と思っていたのですが、自治体の奨学金の窓口に相談してみたところ、県内の別の病院で3年働いたら返済免除になることに。実は200床未満の小規模病院だと、5年ではなく3年で返済免除だったんですよ」
新しい病院での看護業務は、大学病院とは大きく異なる環境であり、これが彼女には合っていた。そして、仕事に忙殺され、気分が塞ぎ込んだことから始めたネットワークビジネスからも、ようやく足を洗うことができた。
冒頭で述べた通り、看護奨学金の制度にはデメリットがある。合わない職場で働くことになった前田さんのケースは、退職の直接の原因こそやや極端なものの、新卒社会人の悩みとしては普遍的だったと言えるだろう。だからこそ、前田さんは後輩たちへこんな想いを語る。
「新人の看護師の中には『看護奨学金の返済免除があるから病院を辞められない』と思っている人が多い。でも、自分に合った職場がある可能性も当然あるので、そちら側にも目を向けてみてほしい。そして、それは決して逃げではないことを知ってほしいです」
※本稿は『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)の内容を抜粋・再構成したものです。