アパレル企業に勤務するBさん(20代男性)は大学時代、金髪にしていた。就活もそのまま臨んだが、卒業間近になり、母方の伯父が不慮の事故で亡くなった。
「伯父は、僕の金髪を『かっこいい』とほめてくれていたので、そんな伯父なら金髪で参列しても許してくれると思ったんですけど、親からは『葬儀に金髪はダメ。(黒く)染めて来い』と。親曰く、金髪だとふざけているように見え、悲しい気持ちを表していないからだそうです。
結局、親の意向も尊重して、黒く染めました。スーツはリクルートスーツを流用し、黒いネクタイだけ買いましたが、親からは『そろそろ喪服を揃えなくちゃね』とも言われました。“マナー”に則るのは、お金がかかるんですね……」(Bさん)
「スカートのほうが“上”」説の由来
このように葬儀に参列する時の服装やマナーで悩む人は少なくないようだが、葬儀のプロはどのように考えているのか。葬儀社に20年以上勤務する現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人の赤城啓昭氏はこう語る。
「実際の葬儀の場では、確かに女性の9割はアンサンブルを着ている印象です。ネット上には、パンツスーツはNGのような解説もありますが、全く問題はありません。パンツスーツを持っているなら、わざわざ新たに買う必要はないと思います。フォーマル度の序列という観点では、スカートに比べるとパンツが“低い”ことは確かですが、無作法というわけでありません。
スカートのほうが“上”とされるのは、海外由来です。パリの『公共の場では女性はスカートを着用』といった旨の条例が10年前ほど前まであったように、スカートがよりフォーマルという意識が根底にあったことが大きく影響していると思われます」(赤城氏、以下同)
謎マナーが蔓延している背景には、ネット検索で上位に掲載される広告や、葬儀業界の実態を知らないまま、聞きかじりで書いたようなブログ記事による影響もあるようだ。
「ネット上で多数ヒットする、業界の思惑や不確かな情報に真に受けてはいけません。パンツスーツは全然『あり』です。あまりにペラペラしているような安物だと、お葬式にふさわしくないものもあります。そういうものが検索上位に表示されていることも少なくないので、注意が必要です。男性でお得に喪服を買いたいなら、ユニクロのカスタムオーダーのウール製スーツなどはいいと思いますよ。ジャケットとパンツで計2万5000円ほどと、コストパフォーマンスに優れています」