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「見積もりにはなかったけど…」 葬儀で「心付け」を渡す必要はあるのか?現役葬儀社社員が回答

業界20年、葬儀の“移り変わり”を見てきた赤城啓昭氏

業界20年、葬儀の“移り変わり”を見てきた赤城啓昭氏

 そして葬儀当日、Aさんは、式が始まる30分ほど前、葬儀社担当者に用意した2つの袋を手渡した。そのことを後から知ったAさんの息子(30代)は、内心「払わなくてもいいお金だったのでは?」と思ったが、時すでに遅し。誰に渡る何のお金だったのか確認したい欲にかられたが、葬儀を終えてからお金の話を蒸し返すのも無粋かと、諦めた。

「葬儀社の方にはお世話になったので、もちろん感謝の気持ちはあるのですが、“心付け”というのはそもそも必須なのでしょうか? “心付け”を渡したら、こちらに何かメリットがあるのでしょうか? あるいは、それがないと雑に扱われるとか……? 袋が2つだった理由も気になります」(Aさんの息子)

言い値でやりたい放題の高額請求も

「葬儀 心付け」で検索すると、「霊柩車運転手に○○円」「火葬場スタッフに○○円」といった“相場”を紹介する記事が多数ヒットする。

 葬儀社に長年勤務する現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人の赤城啓昭氏は、こういった“心付け”を、「必須のもの(義務)では全くありません」と断言したうえで、袋が2つだった理由に対しては、「紹介会社が2つに分けるように言った場合、葬儀社用と火葬場用でしょう」と推察する。

「遺族の方たちは、提示された“心付け”に対して、断らない人がほとんどなんです。やはり、亡くなった方のお世話をしてくれる人たちへのお礼を表す手段として金銭はわかりやすく、Aさんのように、言われたら“そんなものかな”と思う方は少なくありません。ただ、その善意に付け込み、葬儀社によっては、火葬場に3万円、自社には5万円というような言い値でやりたい放題の高額請求もあるようです」(赤城氏、以下「」内同)

 実際の相場はそれぞれの職種に3000~5000円のようだが、葬儀社がとりまとめるケースが多く、はたしてきちんと“チップ”としてスタッフに届いているかどうかは判然としないのが実情だ。また、赤城氏は、「Aさんのケースであれば、葬儀社が葬儀紹介会社に払う紹介料の“補填”として、自社で受け取るものかもしれない」と分析する。

 とはいえ、そういった“心付け”は減少傾向にあるという。昨今のコンプライアンス遵守の流れによるものだ。

「現在、公営火葬場では、“心付け”の受け取りは禁止。民間の火葬場でも、昨年1月に東京23区内で7割の火葬を手がける民間大手・東京博善が“心付け”を辞退する方針を発表し、それにならって辞退するところが増えています。受け取ったら、不正行為として解雇処分を科す企業もある。一方で、“もらえるものはもらう”という風習がまだ残っているのが実態です」

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