岸田政権が危機に瀕している。重要閣僚が相次いで辞任し、支持率は内閣発足後最低の33%まで下落。そんな風前の灯火である岸田文雄・首相に残されたのは、「聞く力」ならぬ「言いなりになる力」のみ。その結果、財務省が主導する「大増税」が着々と進められようとしていた。
岸田政権の増税路線の“大義名分”はコロナ対策で財政を大盤振る舞いしてきたという理由だ。
感染拡大が始まった2020年以降、政府は毎年巨額の補正予算を組み、GoToキャンペーンなどで業界にバラ撒いてきた。今国会でも、「物価高騰対策」の総額29兆円の補正予算が審議され、これまでと合わせて総額100兆円以上の税金がつぎ込まれる。国民に回ってきた給付金はそのうちのごく一部に過ぎないが、財務省は使ったカネを国民から増税で取り戻そうとしているのである。
政府が現在無料のコロナワクチンの接種に「1回1万円かかっている」と有料化を議論しているのもその一端だが、ワクチン有料化くらいでは焼け石に水、100兆円を成人以上の人口の1億人で割ると1人100万円負担させられる計算だ。
だが、元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授は「必要のない増税」だと指摘する。
「財務省は安倍―菅政権時代は思うような増税ができなかったから、岸田政権でまとめてやってしまおうという考えです。安倍―菅政権は景気回復のために財政の力を使うことが必要と考えたが、国民負担となる増税は問題外で、財源には埋蔵金を使った。
例えばコロナ対策では失業を抑えるために雇用調整助成金を利用した。これは税金ではなく失業保険のカネで、失業率の低下で余っていた。このように国の予算に隠れている埋蔵金を使えば増税は必要ない。物価高騰対策にしても、財務省が為替介入に使っている外国為替資金特別会計は円安で含み益も膨れあがっているから、それなどを財源に充てれば50兆円くらいすぐ出せます」
それでも岸田首相が増税に突き進むのは、「財務省政権」の性格を持っているからだ。
岸田派(宏池会)の創設者は財務官僚から総理になった池田勇人氏であり、歴代会長には大平正芳・元首相、宮沢喜一・元首相など財務官僚OBが並ぶ。現在の岸田派でも、前述の宮沢洋一・自民党税調会長をはじめ、木原誠二・官房副長官、村井英樹・首相補佐官、小林鷹之・前経済安保担当相ら財務官僚出身者が首相の周囲を固めている。
ちなみに岸田首相自身は民間サラリーマン出身だが、叔父が財務官僚で、妹2人も財務官僚に嫁いでいる“財務一家”なのだ。