田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国でコロナ感染者急増でも消費セクターの株価好調 「ゼロコロナ政策」精緻化の影響は

ホテル・レストランセクターではストップ高も

 中国共産党中央政治局常務委員会は11月10日、新型コロナウイルスの感染予防、コントロール業務をさらに一歩進んで優れたものとするために、「二十か条の措置」を採ると発表、翌日にはその具体的な内容を含む通知が国務院から発表されている。

 具体的には、濃厚接触者や入国者に関する隔離期間について“集中隔離7日間、自宅での観察3日間”といった規定を“集中隔離5日間、自宅での隔離3日間”に緩和、変更するといった、ゼロコロナ政策の緩和ともとれる部分もある。だが、全体を通してみれば、検査を精緻化、合理化、簡素化したり、医療体制を整えたり、経済停滞を引き起こす各組織に対する規制をより柔軟なものとしたりするといった内容が中心だ。

 今回の通知によって、ゼロコロナ政策はより精緻化され、景気への悪影響がより小さくなるのだろうが、感染者数がこれだけ増えてしまい、感染地域が広がってしまえば、その効果も限定的と言えよう。

 日米の市場関係者たちは、ゼロコロナ政策に対する人民の不満が高まり、社会が不安定化することを懸念しているようだ。確かに、零細飲食、小売業を中心に、経営破綻を苦に悲惨な事件が発生したりしているが、そうしたことは以前から広く薄く存在している。小規模な騒動を含め、足元でそれが急激に増えていることを示す客観的なデータはない。

 ちなみに、28日の上海総合指数は0.75%下落しているが、新型コロナ禍で悪影響を受けるホテル・レストランセクターでは、華天酒店(000428)がストップ高、君亭酒店(301073)が9.42%高で、このセクターでもっとも上昇率の低かった北京ダック専門店の全聚徳(002186)でも2.84%上昇している。レジャー施設・旅行セクターでは、峨眉山(000888)がストップ高となり、同セクター20銘柄中、19銘柄が上昇、空港・空運セクターでは13銘柄中、12銘柄が上昇している。

 全体相場が弱含む中でも、一部の本土投資家は厳格なゼロコロナ政策によって、新型コロナウイルスの感染拡大はコントロール可能だと予想し、リターンリバーサルを狙い、果敢にリスクテイクしているようだ。

 中国が自らの政策によって社会を不安定化させるようなことはなさそうだが、米国が対中強硬策を止めない限り、中国が輸出産業や、米系企業に対して、人為的に、局所的にゼロコロナ政策をより厳格化するようなことはあるかもしれない。現実的なリスクとして意識すべきは、後者によるグローバルサプライチェーンの分断の方ではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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