世界的に進行しているインフレ。日本でも10月のCPI(消費者物価指数)は前年比3.6%と大きな伸びを見せている。資産運用をおこなううえで、インフレ下ではどんなことを意識すればよいのか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第22回は、「インフレの現状とその対策」について。
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金融関係者、投資家、政治家、ビジネスマン、その他世界中の人々が、今、いちばん気にかけているのが物価の上昇、つまりインフレです。なぜ今、これほどまでにインフレが世界中の関心ごとなのでしょうか?
世界中でインフレが起きているわけ
今起こっているインフレの要因は3つあります。
【1】コロナによって強制的に止められた経済が再開し、モノや人が足りなくなったこと
【2】ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰
【3】金融緩和によってお金がばら撒かれ、お金の価値が下がったこと
これら3つが重なったことで、経済界の偉い人ですら想像できなかった速さでインフレが進行してしまいました。
世界のインフレ状況
インフレ具合を測る代表的な指標のひとつにCPI(消費者物価指数)があります。最近は、アメリカのCPIの数字によって、株価や通貨が大きく動くため、発表の瞬間は、世界中の投資家が息を呑んでいます。2021年1月に前年比で1.4%だったCPIは、その後急速に上昇し、2022年6月には9.1%をつけました。直近の10月は7.7%とややピークアウトした様子も見え、ひと段落ついていますが、まだまだ予断は許しません。
アメリカ以上にインフレに苦しんでいるのは欧州で、イギリスの10月CPIは前年比11.1%と震える数字となっています。
よいインフレ、悪いインフレ
実はインフレには、よいインフレと悪いインフレがあります。よいインフレは、賃金の上昇を伴うインフレです。モノやサービスの需要が高まることで、価格が上昇し、それに伴って企業の売上が伸び、従業員の給料が上がるといったものです。まさに日本の高度成長期が、黄金のインフレ時代でした。
一方で、悪いインフレは、生産コストの上昇や、世界情勢の悪化によって起きるインフレです。この場合は、賃金は上昇しないので、物が売れなくなり景気は悪化してしまいます。
今、アメリカでは賃金も上昇していますが、物価の上昇ペースのほうが早いため、じわりと景気悪化の兆候が見えてきています。