インフレの本当の原因はコロナでも戦争でもない
まさにいま、私たちが食費や電気代を必死に節約しようとしているように、物価が上がれば、国民の消費は生活必需品だけに向かい、娯楽を楽しむ余裕はなくなる。
ウクライナ問題によって世界中でモノの供給が滞り、消費が減ることであらゆる企業の利益が下がり、さらに供給は減る。だが、本当にそれだけでここまで世界的なインフレが加速するだろうか。
経済評論家の加谷珪一さんは、インフレの原因は、もっと深いところにあると話す。
「コロナで物流が混乱し、そこにウクライナ問題が追い打ちをかけたのは事実です。しかし、それ以前に“金融政策のミス”がある。中国など新興国の成長で需要が拡大し、物価が上がっていたところに、リーマン・ショックに対応するため各国の中央銀行がお金をばらまく『量的緩和』を実施。これが物価上昇に拍車をかけたのです」
そこに国家間の対立もからむ。“世界最大の消費国家”であるアメリカと“世界の工場”である中国の貿易戦争により、安く大量生産できる拠点を失ったのだ。
エネルギーや食料など、あらゆるモノを輸入に頼るわが国は、こうした国際情勢に振り回されている。
コロナ前から、インフレは着実に進んでいたが、その本格的なスタートは意外にも、トランプ前米大統領の就任だ。
「“アメリカ第一”を掲げるトランプ氏が、それまでのグローバリズムの流れを一気にナショナリズムに変えました。つまり、世界中で協力して経済を発展させようとしていたのが、突然、自国の利益だけを追求するようになったのです。中国製品に高い関税をかけたことで先進国と新興国の間に“壁”ができ、デフレ傾向にあった先進国を、一気にインフレに方向転換させてしまいました」(浅井さん)