カニ脚肉を忠実に再現した本格派カニかま「ほぼカニ」が注目を集めている。もはや練り製品とは思えない斬新な噛み心地が生まれた裏にある、開発者たちの知られざる努力を追った──。
どれが本物の高級食材かを当てるテレビの人気特番『芸能人格付けチェック』(テレビ朝日系)で芸能人が試食したところ、複数人が「これは本物のカニ」と回答し話題をさらったのが「ほぼカニ」だった。見た目も、口の中で弾力を保ちつつほぐれる食感も、まさにズワイガニである。だが、スケソウダラなどのすり身を使った正真正銘のカニかまだ。
カニかま(カニ風味かまぼこ)誕生から半世紀。見た目も味も食感も、本物のカニへ近づく進化に驚く。まずはその歴史を振り返ってみよう。
日本発の食品「カニかま」は、1970年代に複数のメーカーが発売を開始したスティックタイプ(第1世代)から始まった。縦に真っすぐ割けるのが特徴で、カニの雰囲気を出すために赤白ではあるものの、明らかに本物のカニ脚肉とは異なる形だった。
1980年代からは、繊維が短めでほぐしやすいタイプ(第2世代)が登場する。カニ肉のように、ほぐれる形状を真似たものだ。現在も、サラダや炒飯などの調理で重宝されている。
そして2000年代に入り、より本物のカニに似せた進化版(第3世代)が話題になった。そうした流れの中で「ほぼカニ」は、ズワイガニに激似のカニかまとして2014年に登場。以来、今年10月までに累計5500万パック販売されている。
製造元のカネテツデリカフーズは、大正15年創業の練り物メーカー。限りなく本物のカニに近いカニかま開発に着手したのは、年々価格が高騰するカニ市場を睨んでの決断である。かまぼこ製造で培った細工や重ねの技を駆使した結果、本物のカニ肉を噛みしめた瞬間まで再現するカニかまを導き出せた。おかげで物価高にあえぐ今日でも、我々は憧れのカニ味をお手頃価格で楽しめる。
カネテツデリカフーズ開発部部長の宮本裕志さんは「本物のカニのアミノ酸成分まで解析し、開発に2年かけました」と振り返る。