「僕は本当に友達がいない」
1位となったのはAI inside社長・渡久地択氏(38)で、保有資産は729億円。聞き慣れない会社名だが、手書き文字をAIで読み取りデジタル化する技術を軸にサービスを展開する。同社設立は2015年だが、2020年3月期には前年比3倍超の売上高を記録するなど、右肩上がりの急成長を遂げた。
渡久地氏の成功の原点は学生時代に遡る。雑誌のインタビューで「18歳の時に、時代を先取りするなら宇宙かAIだと思った。将来を予測するために過去100年の歴史を勉強し、200年先までの未来年表を1日単位で作った。これまで、ほぼ想定どおりに進んでいる」と答えている。
見た目は爽やかな印象で物欲はほとんどないといい、私生活でも派手な交友関係とは無縁のようだ。日経新聞のコラム「交遊抄」でも〈僕は本当に友達がいない。仕事の人間関係と家族だけで手いっぱい〉〈メールですら週に5通も送らない〉とやや自嘲気味に告白。孤高のトップランナーと言える。
2位は、元楽天社員で、「楽天市場」に携わったプレイドCEO・倉橋健太氏(39)。三木谷浩史・楽天社長を長く取材する経済ジャーナリストの大西康之氏が言う。
「倉橋氏や楽天モバイルの矢澤俊介社長が入社した2005年は、楽天がプロ野球に参入した頃。全国区の知名度を得て勢いに乗り、非常に優秀な人材が集まった。そのなかでも一目置かれていたのが倉橋氏で、楽天市場でデータを利用したディレクションやマーケティングの経験を積み、そのノウハウを持って独立し形にしたのがプレイドです」
同社が提供するのは「Web接客」と呼ばれる分野のITツール。大手食品会社やメガバンクをはじめ、国内外の有名企業に導入されている。
4位は、「ネットでお店を開くなら~♪」のCMでお馴染みのBASEのCEO・鶴岡裕太氏。リストでは最年少の32歳だ。大分で婦人服店を営む母の「ネットショップをやりたい」との言葉で、誰でも簡単にネット店舗を開設できるサービスの着想を得たという。
そんな鶴岡氏はベンチャー投資界の“愛されキャラ“で、2012年の創業以来、メルカリの山田進太郎氏、SBIホールディングス北尾吉孝氏など名だたる起業家・投資家らと交流、出資を受けている。2014年のインタビューでは「給料は大企業のサラリーマン以下」と答えていたが、8年間で資産は372億円に達した。
※週刊ポスト2023年1月1・6日号