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配偶者の遺産を相続するうえで、特に重要になるのが遺言書だ。
「公正証書遺言や自筆証書遺言も、その存在がわかるようにしておくことが重要。遺言書の有無や所在がわからないと相続に大きな影響を及ぼすうえ、遺産分割協議書による手続き後に見つかると、手続き自体をやり直すことになりかねません」
民法改正により、自筆証書遺言は法務局での保管が可能になったので、利用を検討してもよいだろう。
自宅の登記済証や売買契約書など、不動産関係書類も大切に管理したい。
「不動産売買契約書は、自宅を売却する際に不可欠です。紛失により取得時の価格が証明できなければ、取得費は売却価格の一律5%で計算されてしまう。差額は売却益として課税対象となるため、本来より税金の負担が重くなることがあります」
夫の死後、専業主婦の妻が遺族年金を受け取る際や、故人の未支給年金を配偶者や家族が受け取る際には、故人の「年金手帳」や「年金証書」の提出が必要となる。紛失などにより準備できない場合、手続きに必要な書類が増えて煩雑になるので注意が必要だ。
故人の健康保険証は加入する健保組合や自治体など、それぞれの保険者に返却する必要があるが、これを紛失した場合も、切り替え手続きに余分な手間がかかることがある。
見落としがちなのが、パソコンやスマートフォンで管理している情報だ。
「電子マネーやネット銀行、ウェブサイトの定額サービスなどを利用する方が増えていますが、アクセス時のIDやパスワードがわからなければ、残された家族が情報を把握することは困難。有料サービスの請求や、クレジットカードの引き落としが行なわれてしまいます。パソコンやスマホのロックを解除するパスワードとあわせ、利用先や対応を一覧にしておくとよいでしょう」
備えあれば憂いなし──元気なうちに情報共有を済ませておくことだ。
※週刊ポスト2023年1月1・6日号