65歳以上の高齢者が人口の約3割を占める超高齢社会となった日本を今後待ち受けるのは、多死社会だ。厚生労働省の「令和2年版 厚生労働白書」によると、死亡数は年々増え続け、2040年には1989年(約79万人)の2倍を超える水準(約168万人)まで増えると見込まれている。死亡数が増加傾向にあるのだから、葬儀社のニーズも増えて葬儀市場の拡大も見込まれそうだが、実際はそうではないようだ。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、葬儀業の売上高は2017年の6112億円をピークに減少傾向にあり、2021年は5157億円に。競争環境が厳しさを増す中で、淘汰される葬儀社も出始めているという。一体何が起きているのか。
自営業の60代男性・Aさんは、両親の葬儀を行った際、ほぼ同じ葬儀内容だったにもかかわらず、料金が違ったことを不思議に思った。
「どちらも家族葬でしたが、父親は120万円ほどでした。初期プランは地元のどの葬儀社より安かったのに、そこに会場使用料などのオプションがいろいろついて、結果的に他より高くなりました。でも、対応は遺族に真摯に向き合ってくれて、満足できるものでした。
数年後に母親が亡くなった時には、違う葬儀社に頼んでみました。複数社に見積もりを取ってから、父親の時より費用を抑えたい旨を伝えると、同じ内容で100万円で済んだのです。かといって、母親の時よりも簡素とか、何かを意識的に省いたつもりはなかったのですが……」(Aさん)
Aさんは、さまざまな葬儀社を調べるなかで、ある特徴に気づいたという。
「不動産業と葬儀業を掛け持ちしたり、葬儀屋が便利屋やリフォーム業に手を出しているなど、“兼業”しているところがあったのです。葬儀業界は不景気でも“安泰な業界”だと思っていたのですが、意外に厳しいのかもしれません」(Aさん)