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「不景気でも葬儀社は安泰」の嘘 単価減少、大手参入で競争激化する葬儀業界のリアル

死亡数の推移(令和2年版 厚生労働白書より)

死亡数の推移(令和2年版 厚生労働白書より)

“寺とのつながり”のメリットが減ってきた

 葬儀社に長年勤務する現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人の赤城啓昭氏は、こう指摘する。

「家族経営の零細企業や中小企業の中には淘汰されるところも出てきていますね。一方、大手は支店を作るなど、どんどん大きくなっています。やはり大手だと効率的に運営できるので、生産性が高いという強みはあるでしょう。

『人は必ず亡くなるから、葬儀社は安泰』というわけではありません。時代とともに葬儀が簡略化され、小規模になっているので、単価は安くなる一方です。アピールポイントがない葬儀社は、価格競争に巻き込まれ、淘汰されることになります。その流れから、家族経営の葬儀社などは、『儲からない』と子供が継がず、廃業というケースも少なくありません」(赤城氏、以下「」内同)

 大手とは異なり、その土地ならではのネットワークがあり、ローカルルールにも精通する地元の葬儀屋ならではの強みもあるようにも思えるが、今の実態はどうなのか。

「確かに地方の葬儀社は、かつて“寺との強いつながり”という強みがありました。『檀家さんが亡くなったら紹介してくださいね』という感じです。とはいえ、檀家の減少で寺の力が弱くなってくると、そのうまみがなくなってきました。そこに大手がチャンスとばかりに参入。大手は名が知られているブランド力と安心感があり、サービス水準が一定以上で、クオリティも高い。一度受け入れられれば、その土地に定着することも容易です」

 また競争が激化する過程において、地方の葬儀社には“ブラック化”しているところも少なくないという。

「安い賃金で人が集まらず、時給換算ならファストフード店のバイトをやっていた方がいい、なんていうところもあります。さらに、若手を育てようという気概も乏しい。ベテランが辞めたら、新人を入社1か月で現場に出し、つぶれるまで“使い捨てる”ことも珍しくないようです。

 女性をなかなか活用できないというのも特徴です。式場を持っていない葬儀社は、祭壇を運ぶなどといった肉体労働もともなうため、女性を正社員にしたがらない傾向があるんです。ただ、会館を作ればそういった体力的なハンデは解決できるのも事実。大手では会館を設けていますし、エンバーミングでは女性の方が活躍しています」

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