風呂なし物件が若者に人気化しているというニュースが、ネット上で物議を醸している──。日本経済新聞の12月17日夕刊に掲載された「風呂なし物件、若者捉える シンプルライフ築く礎に」という記事(電子版にも掲載)だ。なぜこの記事がネット上で波紋を呼んでいるのか、かつて自身も風呂なしアパートに住んだ経験のある、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。
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この記事は、基本的には「必要最低限なもので過ごす新しい形のシンプルライフをする若者」を紹介する記事で、風呂なし物件に住むことを肯定的に捉えています。そして日経の公式ツイッターも、次のようにツイートしました(12月18日)。
〈風呂なし物件を選ぶ若者がじわりと増えています。家賃を抑えるだけでなく、家の機能を減らしシンプルに生きたいという志向に沿う側面も。地域とのふれあいを求め、銭湯を好む人も多いようです。〉
風呂がなくても地元の銭湯へ行き、人々と交流したり、24時間営業のジムで風呂を利用できる、といった“いい話”として紹介していますが、これにネット上では、猛烈な数の反発が寄せられたのです。このツイートから4日後の段階で約1500件の「いいね」に対し、その倍となる約3000件の「引用リツイート」がついています。通常、ツイッターでは「いいね」の方が多いものですが、これが逆転した場合はネガティブな意見が多くなる傾向があります。「こんなひどいことを言ってるヤツがいる」というソースを出して批判をする人たちがいるからです。
批判の基本的な論調は、【1】カネがないから仕方なく住んでいるわけで、情緒を求めているわけではない、【2】好き好んで風呂なし物件を選ぶ人は滅多にいないと思う、【3】コロナ陽性になった時など、どうやって風呂入るんだ、【4】銭湯が減っているので風呂なし物件はどんどん不便になる――といったものです。これに加えて、日本を貧乏にした政治への批判や、高給取りのイメージがあるマスコミがこうしたニュースを発信していることへの不満も見受けられます。