旅行者にとって最大の障壁だった帰国時の隔離措置
具体的には、隔離措置、濃厚接触者の判定、感染リスクによる地区指定が廃止され、PCR検査は任意となった。さらに、出入国時における人員、貨物などに対する特別な検疫管理措置が廃止されることになった。
中国本土から海外に旅行する人たちにとって最大の障壁であった帰国時の隔離措置が1月8日以降、廃止される。地方政府(公安出入国管理機関)がパスポート申請に余計な条件さえ付けなければ、後はハングリーな関連業者たちが熾烈な販売競争を繰り広げることで、海外旅行需要は急回復に向かうだろう。
実態の変化に柔軟に対応した極めてスピード感の溢れる措置で、既成ルールをひたすら守ることに拘泥しがちな日本社会からすれば考えられないことかもしれない。だが、こうした性急なやり方にはどうしても副作用が伴う。
11月以降の一連のなし崩し的なゼロコロナ政策の緩和、集団免疫獲得戦略への転換は中国社会に大きな負担を強いている。
各都市では、感染を放置することで、できるだけ早く集団免疫を確立させようとしており、それによって北京などの一部の大都市では社会が騒然としている。現地のネット空間では連日、感染拡大による被害が伝えられている。高齢者ばかりでなく、若者や、子供までもが感染し、亡くなるケースも多く報告されている。
旅行の計画に浮かれたり、ビジネスチャンスの到来に高揚する人々もいれば、高熱に侵され生死の境を彷徨う人々もいる。いろいろな立場の人々でごった返しとなる中、中国は唐突にアフターコロナ時代を迎えようとしている。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。