予定より1年早く全世界で50万台を突破
その辺のことを考えながら今回もID.4で乗り出してみました。VWのBEVには他にシリーズの第一弾として登場したハッチバックの「ID.3」があり、これがBEV版のゴルフというポジションです。この他にもID.4のクーペモデル版として「ID.5」、中国市場用として「ID.6」、さらに“BEV界のワーゲンバス”ともいわれ、その可愛らしい外観とともに注目度が急上昇しているミニバンの「ID.Buzz」といったラインナップがあり、さすがに充実しています。
最新の情報では、全世界でID.ファミリーは予定よりも1年早く販売目標である50万台を達成したといいますからVWのBEV戦略は順調に進んでいるということでしょう。その上でSUVの支持が高い日本市場には、手始めとして、世界戦略モデルであるID.4が投入されたのでしょう。
日本のBEVにはないデザインセンス
早速走り出してみると、相変わらずモーターは実にスムーズで静粛性も高く、もちろん力強さがあり、交通の流れをしっかりとリードできます。0~100km/hが8.5秒ですから特別強力ではありませんが、全体の走りの印象は悪くありません。
それでも正直に言えばやはりモーターのフィーリングに特別な感慨がないのです。しっとりとした乗り心地は2.1トンという車重の重さと、後輪で駆動することによる上質なハンドリングと、モーターのスムーズさ、そして広々としたキャビンが複合的に合わさり、なんとも平和というか、少々言い過ぎかもしれないが、エレガンスさえ感じる走りになっています。ひょっとしたらもうモーターについての論調など、これからのBEVを評価する際に不要なことなのかもしれません。
ひと走りしたところで、スタイルをじっくりと見てみました。エンジンのないBEVらしく、フロント部分は短め。一方でキャビンは長めのルーフラインでも分かるとおり、居住性の良さが容易に想像させる、ゆったりとしたスタイルです。こうした鼻が短くキャビンがコロッとしたフォルムは、他のBEVでも多く見られるものですが、ID.4のそれは、いかにもVWらしく優等生的であり、嫌みなくスッキリとまとまっています。強烈な特別感はありませんが「これなら合格点ね」と、納得できるデザインです。
さらにエンジン車の感覚をリセットしながらが、他の魅力についても考えながら、ドアハンドルの内側に指を入れるとスッとドアが開きました。ハンドルを引くことなく内側にあるスイッチに触れるだけでドアがリリースされたわけです。この感覚も新しいものです。